2020 Fiscal Year Research-status Report
周術期管理における低酸素応答と免疫応答を指標とした生体侵襲回復能の評価
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19K09344
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Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
川前 金幸 山形大学, 医学部, 教授 (70254026)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
後藤 薫 山形大学, 医学部, 教授 (30234975)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 低酸素 / リン脂質代謝酵素 / エネルギーセンサー / AMPK / TAK1 |
Outline of Annual Research Achievements |
侵襲を受けた後の生体応答は、急性期離脱後の回復を大きく左右すると考えられ、その評価は重要である。生体細胞を解析対象とした生体応答の評価法を確立することができれば、周術期管理に非常に有用と思われる。本研究では、臓器損傷に対する生体応答を、(1)血管破綻による血流障害によって生じる「低酸素に対する低酸素誘導因子HIF1α経路」、(2)組織損傷によって作動する「炎症応答の主要転写因子NF-kB経路」の2つの生存シグナルを評価項目として、種々の細胞・動物モデルを解析することにより、臓器損傷時の生体侵襲応答評価を行い、臨床現場の管理に役立てたいと考えている。申請者の研究グループは、細胞内二次伝達物質ジアシルグリセロール(DG)のリン酸化酵素DGキナーゼ(DGK) ファミリーに関して、種々の病態モデルを用いた生体臓器における機能解析を行い、ゼータ型DGK(DGKζ)が生体ストレス応答と密接に関連することを報告してきた。これまで実験により、DGKζ-KO細胞では、低酸素環境下においてエネルギーセンサーであるAMPKが野生型細胞よりも活性化することを明らかにしてきた。 本年度は、DGKζによるAMPK活性化機構をさらに追求するために、DGKζによって制御されるAMPKのリン酸化酵素の同定を試みた。AMPKのリン酸化酵素として現在、LKB1、CaMKKbeta、TAK1が報告されているが、これらのリン酸化酵素とDGKζのダブルノックダウン実験を行い、AMPKのリン酸化を解析した。その結果、DGKζはTAK1を抑制する可能性が示唆され、DGKζ-KO細胞では、TAK1の活性亢進により、AMPKのリン酸化が増強すると考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、リン脂質代謝酵素ジアシルグリセロールキナーゼ(DGK)による低酸素誘導因子HIF1αと炎症応答の主要転写因子NF-kBの制御機構を主たる解析対象としているが、これまでの研究により、DGKζ-KO細胞では、低酸素環境下において、HIF1αの発現誘導がmRNAレべルで抑制されること、脱アセチル化酵素SIRT1もmRNAレベルでの発現低下が認められること、一方、エネルギーセンサーAMPKは活性化することを明らかにし、本年度は、DGKζの調節を受けAMPKのリン酸化(活性化)を行うのは、TAK1である可能性を示すデータを得ることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
DGKζノックダウン細胞では、エネルギーセンサーAMPKの活性化を介して細胞内ATP量が野生型細胞よりも高くなっていると考えられるため、その分子メカニズムを追求する。NAD+/NADHの測定や乳酸を測定し、細胞内エネルギー産生系であるミトコンドリア機能や解糖系の解析を行う。
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Causes of Carryover |
本年度、低酸素負荷環境下において、HIF1a、SIRT、AMPKの解析に引き続き、NF-kB転写活性の実験も行う予定であったが、DGKζ-KO MEF細胞の状態が悪く、実験の進行が遅れ気味であった。Crispr-Cas9システムを用いたDGKζ-KO 細胞の樹立も試みたが、未だ成功に至っていないのが現状である。次年度は、上記実験を再度進めると共に、siRNAを用いたノックダウン細胞を持ちた実験の並行して進める予定である。
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