2019 Fiscal Year Research-status Report
術後せん妄と脳内神経伝達物質受容体発現に関する研究
Project/Area Number |
19K09357
|
Research Institution | Fukushima Medical University |
Principal Investigator |
村川 雅洋 福島県立医科大学, 医学部, 博士研究員 (90182112)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | 術後せん妄 / ドパミン / アセチルコリン / mRNA / RT-PCR |
Outline of Annual Research Achievements |
術後せん妄は患者の予後に重大な影響を与える合併症であり、その治療には、脳内ドパミン拮抗薬や脳内アセチルコリン代謝阻害薬がある程度の効果を有する。これは、術後せん妄に、脳内で相互作用を持つドパミン作動性ニューロンとコリン作動性ニューロンのバランス崩壊が関与している可能性を示すものである。また、研究代表者らは、全身麻酔薬がアセチルコリン放出を抑制することを報告してきたが、減少したアセチルコリン放出は麻酔終了後速やかに回復する。これは、神経伝達物質放出の変化、すなわち、シナプス前の変化が麻酔や鎮静後速やかに回復してもせん妄が起こることを示している。したがって、せん妄の原因となるような麻酔・鎮静の影響が残るとすれば、受容体発現などのシナプス後の変化が考えられる。そこで、手術時の麻酔や術後集中治療に用いられる麻酔薬や鎮静薬がこれらの神経伝達物質受容体の発現に影響を及ぼすかを検討することが本研究の目的である。 本年度は、アセチルコリン受容体(M1、遺伝子名Chrm1)とドパミン受容体(D2、遺伝子名Drd2)のmRNA転写物の発現量に及ぼす各種麻酔・鎮静薬の影響を、これらの薬物を投与したラットの脳組織におけるmRNA転写物の発現量をRT-PCR法で測定して検討することを計画した。脳組織サンプルから全RNAを抽出し、1ステップのRT-PCR法で、Gapdhをリファレンス遺伝子として、比較 Ct 法でChrm1とDrd2のmRNA転写物発現量を解析する手法を確立した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
RT-PCR法による脳内ドパミン、アセチルコリン受容体mRNA転写物発現量を測定し、麻酔・鎮静薬投与によるこれらmRNA転写物発現量の変化を検討する予定であったが、mRNA転写物発現量測定法の確立に時間を要したため、麻酔・鎮静薬を投与した影響については検討できなかった。
|
Strategy for Future Research Activity |
RT-PCR法による脳内ドパミン、アセチルコリン受容体mRNA転写物発現量測定法は確立できたので、今後は予定通り麻酔・鎮静薬投与によるこれらmRNA転写物発現量に変化があるか否かを検討し、引き続き、脳内ドパミン、アセチルコリン受容体のタンパク発現量に変化があるか否かを検討する。
|
Causes of Carryover |
脳内ドパミン、アセチルコリン受容体mRNA転写物発現量の測定法確立に時間を要し、今年度中に予定していた麻酔・鎮静薬を投与した影響について検討できなかったためであるが、この次年度使用額を翌年度請求分に合わせて使用し、今後これらを検討する。
|