2020 Fiscal Year Research-status Report
客観的運動予備能評価に基づいた高齢患者の全身麻酔リスク解析
Project/Area Number |
19K09362
|
Research Institution | Toho University |
Principal Investigator |
小竹 良文 東邦大学, 医学部, 教授 (70195733)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
牧 裕一 東邦大学, 医学部, 助教 (50349916)
豊田 大介 東邦大学, 医学部, 助教 (80408822)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | バイオマーカー / 炎症反応 / サルコペニア / 体組成分析 / バイオインピーダンス法 |
Outline of Annual Research Achievements |
令和2年度は大侵襲手術をうける患者における術前心血管系合併症、フレイルおよびサルコペニアの有無と術中血行動態および周術期の炎症性バイオマーカーに関する研究を行った。 まず、令和元年度に実施した大侵襲手術患者における侵害刺激指標としての心拍の周期的変動、炎症反応のバイオマーカーであるpresepsinおよびsyndecan-1血中濃度および血行動態との関連を解析し、日本麻酔科学会学術集会において2編の学会発表を行った。この解析の結果、手術中および術後早期の炎症反応が術後の遷延性低血圧と関連があることが明らかになり、日本集中治療医学会学術集会において発表し、現在論文投稿を準備している。併せて本研究の先行研究となる大侵襲手術における術中血行動態に関する論文を英文学術誌に投稿し、その投稿費用を助成金から支出した。 本課題では当初、酸素消費量および活動量計を用いて術前の運動耐用能を定量化することを目的としたが、当初リース契約によって運用する予定であった機器の国内での販売、リース使用が中止となった。また、先行研究において大侵襲手術の対象患者では術前の主観的な運動耐用能低下と骨格筋量減少(サルコペニア)との間に関連があることが示唆された。このため、研究計画を修正し、術前の運動耐用能の定量化手段として骨格筋肉量に注目し、研究を進めることとした。具体的にはバイオインピーダンス法を用いて手術前、手術後に骨格筋肉量を定量し、術中、術後のバイオマーカーとの関連を評価することとした。バイオインピーダンス法を用いて正確に筋肉量を低領するためには正確な体重評価が必須であり、手術直後の臥床状態でも体重測定が可能なスケールベッドを購入し、購入費用を助成金から支出した。令和2年度終了時点で15件の症例を集積し、研究継続中である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
令和元年度に研究計画を修正し、炎症性メディエーター濃度を定量することとした結果、すでに3編の学会発表を行い、論文として発表する準備を進めている。令和2年度では令和元年度で持ち越した代謝呼吸モニタに関するリース契約を締結し、使用を開始する予定であったが、同装置の国内での販売が終了し、リース契約による使用も不可能な状況となった。この状況をうけて、さらに研究計画を修正し、術前心血管系予備能の評価指標として酸素消費量ではなく、骨格筋肉量の定量を行うこととした。令和2年度末の時点で、すでに15症例の骨格筋肉量データが集積済みであり、今後も症例を重ねて、学会発表、論文投稿を予定している。本研究では諸般の事情で研究計画の修正を余儀なくされたが、研究計画策定時には予想し得なかった新知見が得られており、後述するような今後の展開も期待できる事から、総合的には概ね順調に推移したものと考える。
|
Strategy for Future Research Activity |
上述したように本課題では研究計画を修正し、大侵襲手術における筋肉量の変化を経時的に測定することとした。これにより以下の様な展開が期待できる。 まず、術前活動度低下と骨格筋肉量低下には関連が認められており、高齢の手術患者では高い確率で両者が併存する。また、術前活動度低下を有する患者が手術をうける際に、活動度を増加させ、術後合併症を低下させるためには運動療法(プレハビリテーション)および食事療法によって骨格筋肉量を増加させる事が有効であると考えられており、今後術前の介入が大侵襲手術後の骨格筋肉量の推移に影響を及ぼすかどうかを検討する予定である。また炎症反応が筋肉量を及ぼす影響の一つとして、筋蛋白の崩壊があり、重症病態ではICUでの筋力低下(ICU acquired weakness)として注目されている。大侵襲手術でも類似の病態が発生している可能性があり、今後炎症性メディエーターと骨格筋肉量の変化の関連に関しても解析を加える予定である。
|
Causes of Carryover |
当初令和2年度中に呼吸代謝モニタのリース契約を締結し、使用を開始する予定であったが、同モニタの国内販売が終了したため、リース契約の締結には至らなかった。代わって、臥床状態での正確な筋肉量測定に必要なスケールベッドを購入した。また、本研究の先行研究に該当する研究成果を英文学術雑誌に投稿し、その投稿費用を助成金から支出した。リース契約に関わる資金として計上した金額と令和2年度に支出した経費に差があり、差額を次年度使用額として計上した。次年度使用額はpresepsinおよびsyndecan-1等炎症性バイオマーカー定量に関わる費用および論文作成、投稿に関わる経費として支出する予定である。
|
Research Products
(3 results)