2022 Fiscal Year Annual Research Report
膜受容体の流動性とシグナル伝達の関係性から見た揮発性麻酔薬作用機序の解明
Project/Area Number |
19K09373
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Research Institution | Kagawa University |
Principal Investigator |
小野 純一郎 香川大学, 医学部, 協力研究員 (90363217)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
樺山 一哉 大阪大学, 大学院理学研究科, 准教授 (00399974)
坂内 博子 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (40332340)
鈴木 辰吾 香川大学, 医学部, 准教授 (50451430)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 揮発性麻酔薬 / 麻酔メカニズム / シグナル伝達 / 細胞膜の流動性 / 量子ドット / 側方拡散 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、細胞膜上の受容体の流動性とシグナル伝達の関係性を探ることによって麻酔メカニズムを解明することである。研究計画の骨子は、細胞膜上の麻酔関連受容体を蛍光標識し、揮発性麻酔薬イソフルランに暴露した後に受容体の側方拡散を測定することである。2020~2021年にかけて、GABAA受容体を量子ドットで標識し、イソフルラン暴露後の側方拡散について解析を行った。その結果、イソフルラン暴露後10分の時点でGABAA受容体の拡散係数が増加し、30分後に低下した。これにより、イソフルラン暴露によってGABAA受容体の流動性が変化することが分かった。2022年度は、イソフルランによって膜上で移動した受容体がどこに局在するのかを解析した。GABAA受容体の局在は、2種類のシナプス電流と関係している。すなわち、シナプス上に存在する受容体がphasic電流を発生させ、シナプス外にある受容体がtonic電流を発生させる。古典的に知られるGABAA受容体を介するシナプス電流はphasic電流であるが、tonic電流も麻酔薬への感受性が高く、近年注目されている。イソフルラン暴露後の受容体の局在を調べるため、抑制性プレシナプスマーカーであるvGATとGABAA受容体の共局在率を調べた。すると、GABAA受容体はイソフルラン暴露後にシナプス外からシナプス上に移動してくることが分かった。また、GABAA受容体と並んで麻酔関連受容体として知られ、興奮性シナプス伝達を司るAMPA受容体についても解析を行った。興奮性プレシナプスマーカーであるvGLUT1を用いてシナプスにおける局在率を調べた。結果は、イソフルラン暴露後においても局在に変化は見られなかった。以上より、イソフルラン作用によってGABAA受容体はシナプスにおける受容体数を増やすことで抑制性伝達を高めている可能性があることが示唆された。
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