2020 Fiscal Year Research-status Report
開発途上国の救急医療システム構築モデルの提案―地域保健医療枠組みの活用
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19K09403
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Research Institution | Kanagawa University of Human Services |
Principal Investigator |
中原 慎二 神奈川県立保健福祉大学, ヘルスイノベーション研究科, 教授 (40265658)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
市川 政雄 筑波大学, 医学医療系, 教授 (20343098)
坂本 哲也 帝京大学, 医学部, 教授 (40365979)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 救急医療 / 病院前救護 / 地域保健医療システム / 開発途上国 / タイ / ベトナム |
Outline of Annual Research Achievements |
タイにおいて、現地研究者(コンケン病院)と協力してタイの救急医療モデルの発展過程を調査し記述するとともに、発展とともに重症患者の救急車利用割合が上昇することを、コンケン県のデータを用いて示し、論文化した(投稿中)。本研究の主要目的である、プライマリヘルスケアシステムと救急医療との統合の効果評価としては、タイのVillage Health Volunteer (VHV)の救急医療への統合により、農村部における救急医療のアウトカムが劇的に改善しうることをケーススタディーとして報告した(Prehosp Disaster Med. 2021;36:234-6)。また、VHVをコロナ対策に効果的に動員してパンデミックを抑え込んだタイの経験から、VHVがpublic health emergencyに対しても効果的に対応できることを報告した(Bull World Health Organ 2021; 99(5): 393-7)。 ベトナムでは、現地研究者(ハノイ医科大学)の協力を得て、ハノイ市内の国立病院や大学病院など三次医療施設の救急部門の多施設データを用い、心肺停止患者のような重症患者の場合でも、救急車による搬送、目撃者による心肺蘇生は非常にまれであり、結果的に非常に予後不良であることを報告した(Emerg Med Australas 2021 in press)。また、ハノイの救急指令センターのデータを用い、過去数年間に救急搬送人数は増加しているにもかかわらず、救急車、救急隊員の数は微減傾向にあり、増加するニーズを満たすためには予算の増額や人員増が必要であることを報告した(投稿中)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
コロナ禍のために現地調査を実施することができなかったため、2020年度に予定していた、救急医療システム評価指標(科研費16K11422により開発)を用いた分析は十分に行うことができなかった。しかし、初年度に収集したタイとベトナムの情報とデータおよび既存の診療データをもとに分析を行い、論文化を進めた。タイの救急医療モデルの歴史的発展過程について記述するとともに、現在進められているボランティアを用いたシステムの評価を報告した。ベトナムにおいては、ハノイの病院及び救急指令センターのデータを用いて現状評価を報告した。現地調査はできなかったが、その分の時間、さらには緊急事態宣言下で在宅していた時間を用いて、分析と論文作成は予定よりも大きく進捗できた。
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Strategy for Future Research Activity |
コロナ禍のために2021年度以降も渡航が難しく、2020年度までに緊密な協力関係を築くことができたタイ、ベトナムにおいて、現地研究者の協力の下で調査を継続する。タイでは、コンケン病院の外傷登録データおよびコンケン県の救急医療データを用いた分析を継続していく。ベトナムにおいては、タンホア州で新たな救急医療政策が採択されたので、現地研究者の協力を得て、救急医療システム評価指標を用いた評価を行いたい。評価指標のタイ語版、ベトナム語版を作成して、タイ、コンケン県および、ベトナム、タンホア州の救急医療システムを記述し、比較する。
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Causes of Carryover |
2020年度はコロナ禍により調査対象国に渡航して調査を実施することが全くできなかったため、旅費として使用する予定の予算が残ってしまった。2021年度も状況は改善しておらず、渡航できないことが予想される。その場合には、現地研究者と緊密に連携しながら、現地での協力者雇用や既存データの活用により研究を進めていくこととなるため、それに必要な謝金、翻訳など、さらに、論文作成のための英文校正および論文掲載料(オープンアクセスとするため)などに予算を充てたい。
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