2022 Fiscal Year Annual Research Report
開発途上国の救急医療システム構築モデルの提案―地域保健医療枠組みの活用
Project/Area Number |
19K09403
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Research Institution | Kanagawa University of Human Services |
Principal Investigator |
中原 慎二 神奈川県立保健福祉大学, ヘルスイノベーション研究科, 教授 (40265658)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
市川 政雄 筑波大学, 医学医療系, 教授 (20343098)
坂本 哲也 帝京大学, 医学部, 教授 (40365979)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 救急医療 / 病院前救護システム / 地域保健医療システム / 開発途上国 |
Outline of Annual Research Achievements |
タイでは、2008年の救急医療政策変化によって、重症外傷患者の救急車による搬送が増加したことを、コンケン病院の外傷登録データを用いて、分割時系列分析により定量的に示した。同時に、重症外傷患者の致死率の変化も経時的に分析したが、致死率は2008年頃には変化は見られず、数年遅れて低下が始まった。これらは現在論文にまとめている。 また、コンケン病院救急部のデータを用いて、救急隊が収集した病院前のデータによる敗血症予測スコアの予測妥当性を検討した。Prehospital Early Sepsis Detection (PRESEP) score と Miami Sepsis Scoreの予測力は高く、開発途上国の救急搬送システムにおいてもこれらのスコア使用により敗血症の診断治療へのアクセスを大きく改善しうることを示した。この結果は論文として報告した(Prehosp Emerg Care 2023 in press)。 ベトナムでは、タンホア州立病院のデータを用いて、脳卒中患者の救急医療へのアクセスを評価した。多くの脳卒中患者は救急車を利用せず、症状が軽快するのを待つ、脳卒中治療の行えない郡病院へ行く、などにより州立病院への到着が遅れてしまい、血栓溶解療法や血管内治療が行えるタイミングを逃していることが明らかになった。この結果は論文にまとめて、投稿予定である。 救急医療システム評価指標(科研費16K11422により開発)を用いた救急搬送システムの評価をインド、スリランカ、タイ、ベトナム、フィリピン、日本の6カ国で完了し、テーマ分析を行った。その結果、途上国における救急搬送システムの適切な発展のためには、リーダーシップや法的基盤、安定的な予算配分、民間部門との協働、基本的レベルの救急隊によるカバー範囲の拡大を優先すること等が重要であることがしめされた。この結果も論文として投稿予定である。
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