2019 Fiscal Year Research-status Report
敗血症性脳症の発症メカニズム解明とIL-18をターゲットとした新規治療戦略
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19K09414
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
小谷 穣治 神戸大学, 医学部附属病院, 教授 (80360270)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 敗血症性脳症 / IL-18 / 脳内炎症 |
Outline of Annual Research Achievements |
これまでCecal Slurry(CS)を用いた敗血症マウスモデルにおいて敗血症性脳症が誘導されるかどうか研究されたことはなく、本研究においては、まずモデルの構築から行った。CSの濃度を3段階に設定し、脳内のサイトカインレベルを調べたところ、CS濃度依存的にIL-b、IL-6の上昇が認められた。またフローサイトメーターによる細胞分布の解析から、脳内に多数の好中球とリンパ球の浸潤が認められただけでなく、グリア細胞の一種であるマイクログリアの増加、逆にアストロサイトが減少していることを見出した。さらに動物の行動試験を行い、CS投与7日目においてマウスの不安様行動が増悪していることを確認した。この不安様行動は、敗血症誘導から30日目までにはほぼ回復しており、既知の研究結果を支持するものであった。以上の結果から、本研究においてCS投与による敗血症性脳症のモデルが出来たと考えられた。 前述の通り、敗血症下において脳内にリンパ球の浸潤を認めたが、このような報告は少ない。そこでFTY720を用いて脳内へのリンパ球の浸潤を阻害したところ、マウスの不安様行動の回復が遅れることが示唆された。その詳細を調べるため、フローサイトメーターにより脳内で増加したリンパ球を解析したところ、T細胞のうちのヘルパー2型T細胞(Th2)、および制御性T細胞(Treg)であった。既知の研究から、これらの表現型の細胞は脳内炎症を抑え、組織修復を促進することが知られている。以上のことから、脳内に増加したTh2およびTregがマウスの不安様行動の改善に寄与したことが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在までにCSにより敗血症、および敗血症性脳症を誘導することができた。また、脳内炎症の指標となるIL-1b, IL-6, IL-18およびTNF-aなどの評価系を構築でき、それらの一部がCS濃度依存的に変動することを確認することができた。さらに、脳内に浸潤した好中球やリンパ球だけでなく、脳内の恒常性維持に寄与するグリア細胞ないしは神経細胞をフローサイトメーターや病理組織学的に解析する評価系を構築することができた。マウスの不安様行動を評価するために3種類の行動試験を立ち上げ、それが回復する期間と脳内炎症との関連性を示すことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
脳内のIL-18を評価する実験系を構築することはできたが、IL-18と脳内炎症との関連性を明確にすることはできていない。よって、抗IL-18抗体の投与による除去やIL-18ノックアウトマウスを使用することで、敗血症性脳症におけるIL-18の生理学的な意義を追求する。
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