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2020 Fiscal Year Research-status Report

敗血症性脳症の発症メカニズム解明とIL-18をターゲットとした新規治療戦略

Research Project

Project/Area Number 19K09414
Research InstitutionKobe University

Principal Investigator

小谷 穣治  神戸大学, 医学部附属病院, 教授 (80360270)

Project Period (FY) 2019-04-01 – 2022-03-31
Keywords敗血症 / 敗血症性脳症 / T細胞 / アストロサイト
Outline of Annual Research Achievements

Cecal slurryを使って敗血症マウスモデルを作成し、敗血症性脳症が誘導されていることをIL-1βやTNF-aのmRNAが上昇していることで確認した。予想に反してIL-18は顕著な変化は認められなかった。敗血症誘導から10日目と20日目にマウスの不安様行動を解析するため、オープンフィールド試験および強制遊泳試験、ビー玉ビー球埋め試験の3つの行動試験を行なった。その結果、10日目では敗血症を誘導したマウス(CS群)では不安様行動の増悪が観察され、20日目では回復する傾向が認められた。
10日目の脳の解析において、既報通り、CS群ではマイクログリアの増加が認められた。その一方、CS群ではアストロサイトが減少していた。20日目の脳の解析では、CS群はマイクログリア数は増加したままだったが、アストロサイトはコントロール群と同程度まで回復していた。また、脳内のリンパ球を解析したところ、敗血症誘導から10日目以降、CS群では経過時間的なT細胞の増加が認められた。
上記の結果から、我々は脳内におけるT細胞が、敗血症性脳症に伴うマウスの不安様行動の回復に寄与しているのではないかと推測した。そこで敗血症マウスに対し、敗血症誘導から5日目以降、fingolimod(FTY720)を投与することで脳内へのリンパ球の浸潤を阻害した(CS+FTY)。その結果、敗血症誘導から30日目において、CS+FTY群では、CS群と比較して不安様行動の回復は遅延し、脳内の炎症性サイトカインは高値を示した。また、CS+FTY群ではアストロサイトは減少したままであった。脳内のT細胞のサブタイプを解析したところ、CS群では脳内で抗炎症作用を示す2型ヘルパーT細胞(Th)と制御性T細胞(Treg)が増加していたのに対し、CS+FTY群では炎症を亢進するTh17が増加していた。

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.

Reason

脳においてIL-18の上昇が認められなかったのは研究計画時の予測とは異なったが、その一方で、敗血症モデルマウスで不安様行動の発症から回復までを、脳内のT細胞およびグリア細胞の両面から評価できるモデルを確立することができた。また、敗血症マウスの不安様行動の回復にはTh2やTregの浸潤が重要であること、さらには、T細胞とアストロサイトと相互作用を示唆する知見を得ることができた。これらの結果は、敗血症性脳症に伴う精神障害の発症と回復において、T細胞やアストロサイトが新たな治療ターゲットとして魅力的であることを示している。
また、上記の結果はBrain, Behavior, and Immunityに投稿し、採択された(Saito, Kotani. et al. 2020)。採択後、short reviewも2報書かれ(Dijoia, et al. 2021. BBI; Karli, et al. 2021. Communications Biol.)、とても高い関心が寄せられていると考えている。

Strategy for Future Research Activity

1. IL-18の脳内での再測定。
我々の研究において、敗血症患者では血中のIL-18が予後予測因子であることを示している。IL-18はIL-1βと同様の経路で炎症のシグナルを誘導するが、敗血症誘導後のマウスの脳内において、その下流に位置するNLRP3は上昇が認められている。そのため、現段階における我々の手技では脳内のIL-18を正しく評価できていない可能性がある。そのため、今後はELISA法やプローブ法など、より検出感度を高めて再度測定を行う。
2. 脳で増加するT細胞の浸潤経路の特定とアストロサイトとの相互作用。
本研究において、新規の治療ターゲットとしてTh2細胞、Tregを見出すことができた。しかしながら、T細胞が脳内でどのような経路で浸潤して増加するのか、ということは、まだ不明である。敗血症ではないが、脳梗塞モデルマウスにおいても不安様行動を発症し、自然治癒することが認められており、T細胞が頸部リンパ節から浸潤することが示されている(Ito, et al. 2018.)。また、脳のリンパ節であるMeningeal lymph nodeも解析対象になると考えている。Ito, et al.(2018)を参考に、脳内T細胞と他のリンパ節におけるT細胞のTCR variantを解析することで、T細胞の浸潤経路を同定したい。
これまで、T細胞とアストロサイトの相互作用を示す研究はほとんどなく、精神障害の発症や治癒に関する知見もほとんど認められていない。しかしながら、アストロサイトはMHCを発現することからT細胞への抗原提示能を有することが考えられ、脳における免疫応答の一翼を担っていることが示唆される。T細胞とアストロサイトの相互作用を示すようなデータを少しでも蓄積したいと考えている。

Causes of Carryover

少額であったため、残ってしまった。
研究消耗品(キムタオル等)で使用予定。

  • Research Products

    (2 results)

All 2021 2020

All Journal Article (1 results) (of which Peer Reviewed: 1 results,  Open Access: 1 results) Presentation (1 results)

  • [Journal Article] Infiltrated regulatory T cells and Th2 cells in the brain contribute to attenuation of sepsis-associated encephalopathy and alleviation of mental impairments in mice with polymicrobial sepsis2020

    • Author(s)
      Saito M, Fujinami Y, Ono Y, Ohyama S, Fujioka K, Yamashita K, Inoue S, Kotani J
    • Journal Title

      Brain, Behavior, and Immunity

      Volume: 92 Pages: 25-38

    • DOI

      10.1016/j.bbi.2020.11.010

    • Peer Reviewed / Open Access
  • [Presentation] 敗血症マウスの脳内に浸潤したT細胞は、敗血症性脳症を抑制し、精神障害の回復を促進する2021

    • Author(s)
      齋藤雅史、藤浪好寿、大野雄康、大山正平、藤岡一路、山下公大、井上茂亮、小谷穣治
    • Organizer
      第35回 日本Shock学会

URL: 

Published: 2021-12-27  

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