2020 Fiscal Year Research-status Report
遊離ヘムをターゲットとする横紋筋融解症における急性腎障害の病態解明と治療の立案
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19K09424
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Research Institution | Juntendo University |
Principal Investigator |
射場 敏明 順天堂大学, 医学部, 教授 (40193635)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | hemoglobin / myoglobin / hemopexin / lactate dehydrogenase / endothelial cell / cell death |
Outline of Annual Research Achievements |
2019年度の培養細胞実験により、hemoglobin, myoglobinによる血管内皮細胞, 尿細管細胞, 白血球への直接障害効果が確認された。すなわちhemoglobin, およびmyoglobinは100~500μg/mLの濃度において時間経過とともに培養細胞の形態変化および細胞死を誘導することが確認されている。2020年度の研究ではこれらの遊離ヘムによる障害を障害細胞より逸脱するlactate dehydorogenase (LD)の測定、および生細胞測定キットcell counting kit(CCK-8)を用いて定量的に確認し、さらに遊離ヘムの生理的スカベンジャーであるhemopexinの効果を検討した。 その結果、hemoglobin 500μg/m, もしくはmyoglobin 100μg/mを添加して培養した血管内皮細胞培養液中のLDは、通常の培養状態で測定した血管内皮細胞(コントロール)のそれよりもそれぞれ、1.33, 1.23倍に増加し、CCK-8については0.79, 0.74に低下がみられた。これに対しhemopexin 500μg/mを加えた場合は、myoglobinに関しては細胞障害の程度が緩和され、LDで10%程度、CCK-8では12%程度の改善効果が認められた。一方、hemoglobinについてはこのような効果は明らかではなかった。 今回の実験により、1)hemoglobin, myoglobinによる培養血管内皮細胞の障害効果の定量測定が可能であった。2)hemopexinによるmyoglobin障害緩和効果が確認された。3)一方、hemopexinによるhemoglobin障害緩和効果は明らかではなかった。hemoglobin, myoglobinの障害性は、ともにFe2+を介して発揮されるものと考えられるが、hemopexinの効果が両者の間で異なる結果となった理由は明らかではない。今回の結果は同様の実験を繰り返して検証する必要があると考える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今回の実験により、研究開始当初に想定していたhemopexinによるmyoglobin障害の緩和効果が血管内皮細胞において確認することが可能であった。しかしながら、2020年度では予定していた尿細管細胞を用いた同様の実験を遂行することができず、腎障害におけるhemopexinの効果を検証するまでには至らなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
横紋筋融解症における腎障害の発生機序には横紋筋より逸脱するmyoglobinが、1)直接的に腎糸球体血管内皮や尿細管細胞を障害するメカニズムとともに、2)白血球を刺激し、neutrophil extracellular traps(NETs)放出を刺激しこれを介して間接的に腎障害を誘導するメカニズムが考えられる。1)に関しては2020年度の実験で、また2)に関しては2019年度の実験で確認することが可能であった。今後はそれぞれの障害経路についてhemopexinによる治療効果を検討していく必要がある。
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Causes of Carryover |
2021年度において、尿細管細胞を用いたhemoglobin, myoglobin障害の定量測定実験、およびhemopexinの治療効果を確認する実験を予定している。また得られた結果を分析し、論文作成を行う予定である。
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