2021 Fiscal Year Research-status Report
遊離ヘムをターゲットとする横紋筋融解症における急性腎障害の病態解明と治療の立案
Project/Area Number |
19K09424
|
Research Institution | Juntendo University |
Principal Investigator |
射場 敏明 順天堂大学, 医学部, 教授 (40193635)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | 横紋筋融解 / 遊離ヘム / 熱中症 / ヘモペキシン / 血小板 |
Outline of Annual Research Achievements |
横紋筋融解はしばしば熱中症においてみられる病態であり、横紋筋から逸脱したミオグロビン、遊離ヘムが組織障害の原因となる。今回、横紋筋融解モデルを用いて遊離ヘムが全身的な炎症反応を惹起し、さらに凝固異常をもたらすことによって組織循環障害の原因となっていることを明らかにした。この遊離ヘムの障害性は生理的な中和物質であるヘモペキシンによって緩和することが可能であると考えられたが、今回のモデルではその効果を確認することはできなかった。しかしながら、横紋筋融解を伴う熱中症の重症度指標として、IL-6に代表される炎症指標、D-dimerに代表される凝固機能検査が有用であることが検証され、また微小循環観察においては血管内微小血栓形成が病態形成に関与していることが明らかになった。また微小血栓の原因としては、活性化白血球とともに血管内皮障害が重要であり、さらに活性化血小板の関与も大きいことが明らかにされた。そして白血球細胞死によって放出されるヒストンやHMGB-1などのdamage-associated molecular patterns (DAMPs)、さらに活性化血小板から放出されるvon Willebrand factor, platelet factor 4, さらには血小板表面に発現し、血中に遊離するp-selectin, c-type lectin-lice receptor 2などのバイオマーカーが重症度の判断に有用であることが明らかになった。以上の研究成果はEClinicalMedicine. 2022 Jan 22;44:101276.にて報告を行なった。またその続報として、Iba T, Helms J, Levi M, Levy JH. The role of platelets in heat-related illness and heat-induced coagulopathy. Thromb Res. が in pressの状態である
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新型コロナウイルス感染の流行に伴って一時研究を中断したため進行は遅れたが、その後再開して予定の研究は完了しつつある状況である。
|
Strategy for Future Research Activity |
横紋筋融解は熱中症においてみられる多臓器障害に大きく関与している。今回の研究により、特に遊離ヘムによって惹起される炎症反応、凝固反応は白血球や血小板などの血球や血管内皮細胞の機能変化をもたらし、微小循環障害の主因となっていることが明らかにされた。またこのような病態の重症度判定には炎症性メディエータや凝固機能検査、さらにはDAMPsや細胞死関連マーカーが有用であることが予想された。しかしながらDAMPsの測定や細胞死判定には特殊な設備を要し、一般的な施設での実施は困難である。熱中症は近年の地球温暖化に伴い深刻な問題となりつつあるが、その診断に関しては現時点において臨床的に有用な診断ツールや重症度マーカーが存在していない。そこで今後の研究においては、日常臨床において実施が可能と考えられる簡便かつ安価で実施できる検査により熱中症診断、熱中症重症度判定を可能とすることを目指す。
|
Causes of Carryover |
COVID-19流行に伴って実験中断期間があり、そのため次年度使用額が生じた。
|