2021 Fiscal Year Research-status Report
視床下部傷害に着目したくも膜下出血の新たな予後決定病態の解明
Project/Area Number |
19K09459
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Research Institution | International University of Health and Welfare |
Principal Investigator |
長谷川 雄 国際医療福祉大学, 福岡薬学部, 教授 (40599114)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | くも膜下出血 / 視床下部 / 急性期 / 脳表血管 / 脳血管周囲マクロファージ |
Outline of Annual Research Achievements |
尾動脈を確保し動脈血を採取、その後定位脳固定装置に頭部を固定し視交叉前槽に自家動脈血を注入する新たなくも膜下出血 (subarachnoid hemorrhage: SAH) モデルを確立した。このprechiasmatic injectionモデルを用いて本研究課題と関連する以下の実験を行った。 1)麻酔下に愛護的に5X5mmの骨窓を設け、顕微鏡下にSAH注入後の脳表血管を撮影し生理食塩水投与(Vehicle)群と比較した。その結果、両群において皮質静脈のうっ滞や血栓化を認めた。一方、Vehicle群と比べSAH群では24時間後の皮質動脈の狭窄が目立ち、神経症状の増悪を有意に認めた。静脈性の変化はVehicle群でも認めることから、頭蓋内圧上昇に伴う静脈圧迫による灌流障害が考えられた。また、動脈性の変化はくも膜下腔の血液が惹起する病的変化に伴うものであり、遅発性脳虚血に伴う神経症状の増悪と関連することが示唆された。 2)脳血管周囲マクロファージは炎症を感知して交感神経を活性化しSAHの遅発性脳虚血に関与する。今回そのマクロファージを不活化させるべくクロドロン酸を前投与しラットSAHモデルを作成、その薬理学的な予後改善効果を検討した。クロドロン酸投与により血管周囲マクロファージは減少、重症SAHモデルでは有意に神経症状の改善が得られた。前年度報告したように軽症SAHでは予後改善効果は得られなかったため、重症型でより活性化を受ける中枢性交感神経が作る炎症を介した病的変化が今回の予後に関与していると考えている。 一方、今年度SAHと視床下部傷害と関連する中枢性交感神経についての知見をまとめ、reviewとしてJournal of Neurochemistryに投稿し査読を経て受理された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年までの結果から、SAH後視床下部傷害が起こりその結果中枢性交感神経の活性化が起こっているものと考えた。従って、今年度は交感神経系の活性化と関連する1)血管収縮物質の影響と2)交感神経系の活性化を誘発する血管周囲マクロファージに着目した研究を推進した。 1)については、新たに導入したSAHモデルを用いて超急性期~急性期にかけての脳表血管を直視下に観察する実験系を確立、超急性期~急性期の脳血管の動的変化を実験的に評価している。 2)については昨年行った軽症モデルに加え今年度は投与する血液量を増やし重症SAHモデルを作成し、軽症と重症での表現型を比較検討しながら血管周囲マクロファージの役割を見出すことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
上述の研究1)については、さらに匹数を増やした上で動的変化とともに動脈から静脈までの形態変化の特徴を明らかとする。現時点では、SAH群において動脈閉塞、SAH群と生理食塩水投与群の両群で静脈系の循環障害を認めている。2)については、主に免疫染色やリアルタイムPCRにて今回の病態と関連する細胞障害性変化を解析する予定である。これらの2つの研究成果をまとめ、今年度中に国際誌投稿を目指す予定である。 さらに、1)の研究と関連し、脳保護効果を持つ薬剤がSAH後の脳表血管異常を改善するか、薬理学的に検討することを計画している。
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Causes of Carryover |
研究は順調に進んでいるが、学会発表がオンラインとなり、計画していた旅費の分が必要なくなったのがこの3年間続いたため残金が少し多くなった。また、今年度はこれまで延期していた細胞障害性変化の解析を中心に行う予定であり、抗体やプライマーの購入に充てたい。 また、前述の2つの研究成果を国際誌に投稿するため、今年度の経費をその準備(追加実験や英文校正)に充てる。
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Research Products
(7 results)