2020 Fiscal Year Research-status Report
悪性髄膜腫:悪性化分子経路・髄膜腫幹細胞の解明による新規治療標的の検索
Project/Area Number |
19K09464
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
吉田 一成 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 名誉教授 (70166940)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐々木 光 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 講師 (70245512)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 悪性髄膜腫 / 髄膜腫幹細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、再発・転移を繰り返し治療に難渋する悪性髄膜腫に対する新規治療法の開発を目的としている。中でも、悪性髄膜腫における悪性化のメカニズムの解明および、培養細胞を用いて、悪性髄膜腫に固有の治療ターゲットの解明を行うことを目的とした。 ここまで、悪性髄膜腫に対し、CGH(Comparative genomic hybridization)を悪性化前後で全10症例で行った。この結果、多くの症例で悪性化の前後において、複数の新規遺伝子染色体異常を獲得していることが分かったが、特徴的な染色体異常の獲得というものはなかった。 さらに、悪性髄膜腫および良性とされるGrade Iの髄膜腫の培養細胞を用いてPhospho arrayを行ったが、Grade Iの髄膜腫において腫瘍形成や成長に関わるタンパクのリン酸化が上昇していることが分かった。本来悪性髄膜腫の方でこういったタンパクのリン酸化が上昇していることが予想されていたが、逆の結果となり、今後検討していく必要がある。 加えて、現在、凍結検体30症例および悪性髄膜腫の培養細胞6例に対し、がん関連遺伝子パネル検査(PleSSisionパネル)の解析を進めているところである。 さらに、当院での摘出新鮮検体を保存、培養(接着培地および幹細胞培地)、マウスへの移植を随時進め、今後の解析の症例数を増やすことを行っている。ただし、マウスへの移植が成功した例は今のところ1例のみである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
上記の通り、悪性髄膜腫の悪性化に関わる染色体異常の解明のため、CGHを行ったが、特徴的な所見は得られなかった。また、Phospho arrayについてもターゲットとなるタンパクが見つからず、予想とは反対の結果となり、こちらについても検討の必要が出てきた。 その他、PleSSision検査はパネルの設定の調整に時間を要してしまい解析が遅れていたが、解析は開始されており、近く結果が得られる予定である。それらの結果をもとに、ターゲットとなる遺伝子異常の解明をおこなっていく予定である。ただし、コロナ感染症国内拡大のため、これ以上の解析が進められていない。症例についても手術規制が入っているため、以前のように検体数を増やすことができていない。
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Strategy for Future Research Activity |
上記の通り、本報告作成時にはターゲットとなる因子の発見には至っていない。予定していたPleSSision検査とともに、凍結検体を用いたmRNAの抽出とnCounterでの解析を行っている。いずれも近く解析が完了する見込みであり、それらの結果をもとにターゲット因子の検索を行っていく。 PleSSision検査の解析結果をもとに、培養細胞に対してターゲットとする遺伝子に対する阻害剤を使用する実験を開始した。治療有効性に関しては現在評価中である。また、培養細胞で効果が認められた阻害剤を用いて、モデルマウスにも同様に阻害剤を投与することにより、その治療有効性を検討する予定である。
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Causes of Carryover |
一部費用が年度末の時点で未請求のものがあり、差額が生じている。実験はCOVID-19の影響もあり進捗はやや遅れているが、おおむね予定通り進行しており、全体の所要額としても予定通りに進んでいる。
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