A study on novel therapeutic strategies for stroke using progesterone.

2021 Fiscal Year Research-status Report

• Project/Area Number: 19K09471
• Research Institution: Institute for Developmental Research Aichi Developmental Disability Center
• Principal Investigator: 田中 基樹 愛知県医療療育総合センター発達障害研究所, 障害モデル研究部, 研究員 (90584673)
• Project Period (FY): 2019-04-01 – 2023-03-31
• Keywords: 神経ステロイド / 脳梗塞 / 神経保護作用

Outline of Annual Research Achievements

プロゲステロン受容体アゴニストnestoroneを用いた新規脳梗塞治療薬の研究に関して、2021年度は下記2点について明らかにした。
（１）本研究課題において、脳梗塞治療薬としてその有効性を検証しているnestoroneはプロゲステロン（P4）受容体アゴニストであるため、その脳保護作用はP4受容体を介して発揮していると考えられる。しかしながら本脳梗塞モデルの主要な傷害領域である大脳皮質や線条体におけるP4受容体の発現分布については、ほとんど分かっていなかった。そこで入手可能なP4受容体抗体について、P4受容体の発現分布が既知である組織でその信頼性を評価した後、信頼性が高いと判断された抗体で大脳皮質におけるP4受容体の発現分布を免疫組織化学染色で解析した。Nestorone投与初期にあたる脳梗塞24時間後におけるP4受容体の発現を調べたところ、神経細胞のマーカーであるNeuNを発現している細胞で主に観察された。この結果は、nestoroneによる脳保護作用の少なくとも一部は、グリア細胞等を介さず神経細胞に直接作用することで発揮されている可能性を示している。
（２）これまでnestoroneの有効性は、若齢ラットにおいて検証してきた。しかしながら実際の脳梗塞患者は高齢者が多いため、その有効性の検証には、老齢動物モデルでの実験が不可欠である。そこでヒトにおいて約60歳程度に相当する老齢オスラットを用いて、nestoroneの有効性を検証した。Nestoroneの投与量、投与方法は、若齢動物モデルの条件と同一とした。その結果、老齢オスラットにおいても脳梗塞処置30日後に観察される感覚・運動機能障害はnestorone処置によって顕著に低減され、また脳梗塞領域も有意に減少した。以上より、nestoroneは患者の年齢に依存せず頑強な治療効果を発揮することが示唆された。

Current Status of Research Progress

3: Progress in research has been slightly delayed.

Reason

脳梗塞は主に高齢者に多い病気であることから、nestoroneの有効性を老齢ラットにおいても検証し、これまでのところnestoroneの頑強な治療効果を示すデータが得られている。しかしながら学術的な評価を得るには、未だ十分なn数がそろっていない。実験に供する動物が老齢であるため、脳梗塞処置前に自然死したり、脳梗塞処置後の死亡例が若齢ラットと比較して多かったことが、その原因である。

Strategy for Future Research Activity

[進捗状況]で述べたように、老齢ラットにおけるnestoroneの脳梗塞治療薬としての有効性については、有望な結果が得られているものの学術的な評価を得るためにはn数が十分でない。そのため老齢ラットの実験に関して、必要なn数を追加する。またP4受容体の大脳皮質における発現分布に関して、神経細胞内局在やグリア細胞での発現についても解析を行い、nestoroneによる脳保護作用の作用点を解明する。

Causes of Carryover

老齢動物を用いた実験において、老齢ラットが実験前に自然死する又は脳梗塞処置により解析前に死亡する例があり、必要な実験が行えなかったことがあり、残額が生じた。残額は、次年度の老齢ラットを用いた追加実験に使用する。