2019 Fiscal Year Research-status Report
低悪性度神経膠腫に対する蛍光診断:ポルフィリン代謝分子に対する機能解析
Project/Area Number |
19K09495
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
山口 秀 北海道大学, 大学病院, 講師 (70399939)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
伊師 雪友 北海道大学, 大学病院, 医員 (30812284)
小林 浩之 北海道大学, 医学研究院, 客員研究員 (70374478)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 5-ALA / PpIX / PEPT2 / lower-grade glioma / photodynamic diagnosis |
Outline of Annual Research Achievements |
アミノレブリン酸(5-ALA)を用いた術中蛍光診断は、神経膠腫の手術では必須の術中支援技術である。本研究では、蛍光検出率が低く必ずしも有効ではない低悪性度神経膠腫に対して、その蛍光発光メカニズムをその遺伝子変異を考慮に入れて解析することで、この腫瘍群においても術中蛍光診断の有用性を高めることにつなげることを目的として研究を行っている。予備的実験として、低悪性度神経膠腫約50例の凍結検体からRNAを抽出し、ポルフィリン代謝の関連遺伝子の発現に関して、蛍光発光を認めた腫瘍検体と認めなかった腫瘍検体の遺伝子発現を比較することによって候補分子の同定を試みた。その結果、遺伝子発現に差がある分子として、ALAD、ABCG2、ABCB6、CPOX、HO-1、PEPT2、UROSが挙がった。その中で、腫瘍細胞への5-ALAの最初の取り込みに関与するトランスポーターであるPEPT2に着目した。PEPT2はポルフィリン代謝経路の細胞内における最上流に位置し、5-ALAの取り込み亢進に寄与している可能性が高いためである。低悪性度神経膠腫の細胞株としてSW-1783を用い、このPEPT2の遺伝子発現をsiRNAを用いて制御したところ、SW-1783におけるPpIX合成が低下、蛍光発光の低下を確認することができた。PEPT2の発現が低悪性度神経膠腫におけるPpIX由来蛍光発光に関与している可能性を示すことができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上述したように、候補遺伝子のPEPT2に着目し、その機能解析を低悪性度神経膠腫の細胞株であるSW-1783を用いて施行した。その結果、PEPT2の発現を抑えることが、5-ALAの細胞内取り込みを減少させ、結果的に蛍光発光物質であるPpIXの発現低下につながり、実際の蛍光強度測定でもコントロール群と比較して優位な蛍光強度抑制を証明することにつながった。低悪性度神経膠腫における腫瘍細胞の蛍光発光に関して分子学的に検討した初めての研究であり、重要な知見の発見であると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
低悪性度神経膠腫におけるPEPT2の発現亢進を惹起するメカニズムの解明を検討している。PEPT2のみではなく再度ポルフィリン代謝経路関連の分子に注目し、臨床データ、特に代謝イメージングであるPET(Positron emission tomography)の術前画像所見に注目、糖代謝やアミノ酸代謝、低酸素状態のイメージング情報と、手術中の腫瘍細胞からの蛍光発光の有無の相関関係を検証し、そのポルフィリン代謝関連分子との発現の相関に関して検証を行う予定である。何らかの相関関係が示された場合、その因果関係に関して機能解析も、前述した手技を用いて試みる予定である。
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Causes of Carryover |
研究が順調に進み、想定していた額よりも少ない金額で期待していた成果を達成することができた。今後、この結果をもとに研究を発展させる計画を立てており、その資金として使用する予定である。具体的にな使用として、抗体の購入、細胞株の新規購入、RT-PCRの試薬購入等の消耗品購入が主となる予定である。
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