2019 Fiscal Year Research-status Report
脳動脈瘤破裂機構解明へ向けた分子生物学的・血行力学的統合解析と新規薬剤治療の開拓
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19K09496
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
中山 若樹 北海道大学, 医学研究院, 講師 (40421961)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
伊東 雅基 北海道大学, 医学研究院, 客員研究員 (10399850)
杉山 拓 北海道大学, 大学病院, 助教 (70748863)
寳金 清博 北海道大学, 保健科学研究院, 特任教授 (90229146)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 脳動脈瘤破裂 / 脳動脈瘤壁在血栓 / 流体解析 / 脳動脈瘤動物モデル |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、脳動脈瘤の破裂機構を解明し、それを回避する薬剤治療を開拓することを目的として、 (1)ヒト臨床例の脳動脈瘤摘出標本、(2)ヒト臨床例の血管血流量測定および術前画像による流体力学的解析、(3)易破裂大型動脈瘤の新型動物実験モデル の『3本の柱』による包括的解析を行うものである。 破裂動脈瘤ヒト臨床例では、クリッピング後に、破裂点を温存しつつクリップの外側にある破裂点を含む動脈瘤壁を一塊として摘出した。破裂点の近傍では、壁在血栓や内皮下に数日前からのフィブリン析出や貪食細胞の習俗が見られている。 ヒト臨床例における動脈瘤の数値計算流体解析(computed flow dynamics; CFD)は先行研究によって壁せん断応力がむしろ低下した部位で破裂が起きている傾向がうかがえている。 ラット易破裂大型脳動脈瘤モデル動脈瘤標本による病理組織学的検討では、より安定したニトロ化合物を投与するために、給餌食混入ではなくニトロフマル酸化合物を腹腔内投与することとし、極量を安全に投与すべく、週に2回の投与を繰り返すことにした。これにより、嗅動脈分岐部の小型動脈瘤は9割の確率で誘導され、また約1割の個体では後大脳動脈近位部や後交通動脈に大型動脈瘤を誘導することができた。この結果は英文誌Journal of Neurosurgical Sciencesに採択が決まったところである。 ここでさらに大型動脈瘤の誘導率を高めるべく、閉経後の女性を模して雌ラットで卵管結紮も加えることにし、この条件で、薬剤投与群としてはアスピリン,シロスタゾールを、tail veinから静脈注射し、現在飼育中である。これらの動物モデルから得た標本において、内皮形態、壁在血栓、内皮出血、フィブリン析出、炎症細胞集簇の程度を、薬剤非投与群と比較して、そうした組織変化と破裂の関係性を評価していく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ヒト臨床例における動脈瘤標本の病理解析はすでに症例が蓄積されており、解析結果を整理する段階にある。ヒト臨床例の動脈瘤流体解析は先行研究によって一定の結果が存在している。 ラット動脈瘤モデルを用いた研究は、動脈瘤誘導に数週間かかるため最も時間を要する研究項目であるが、現在、目標としていた薬剤投与の介入をした個体を飼育する段階まで進んできているので、おおむね順調に進行しているものと思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
ヒト臨床例における動脈瘤標本の病理解析では、今後未破裂動脈瘤も同様に解析比較し、破裂との関連性を探っていく予定である。そして、病理標本を摘出した症例においても流体解析ができるように術前データを取得しておき、この壁せん断応力低下と病理組織学的変化との関連性がないか、症例を重ねていく予定である。 ラット動物モデルにおいては、現在飼育中の個体で薬剤投与群と非投与群での所見の違いを解析していくことになる。現時点では大型瘤の誘導率は不明であるが、もし誘導数が少ないようであれば、さらに個体数を重ねる必要がある。また、初回の投与薬剤としては、抗血小板剤や内皮保護効果のある薬剤を選択したが、これで所見の差異が得られなければ、ステロイドやスタチンも試行していく予定である。
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Causes of Carryover |
流体解析ソフトウェアの保守ライセンス料が当初の予定よりも若干低額だったことと、必要とするハードウェアの一部が既存のものを流用できたため、当該年度予算よりも使用額を抑えることができた。一方で次年度も引き続き実験動物を用いることと追加薬剤投与実験も必要であることから、それに必要な経費を充当する必要があるため、この差額を次年度分に追加して使用することにした。
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Research Products
(2 results)