2019 Fiscal Year Research-status Report
脊髄損傷ラットに対する微小重力環境培養を行った頭蓋骨由来間葉系幹細胞移植
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19K09509
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
武田 正明 広島大学, 病院(医), 助教 (10403552)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 脊髄損傷 / 頭蓋骨由来間葉系幹細胞移植 / 経頭蓋刺激運動誘発電位 |
Outline of Annual Research Achievements |
間葉系幹細胞(MSC)の採取部位として骨髄や脂肪組織が代表的であるが、採取する部位によりMSCの増殖能や分化能が異なる可能性がある。前頭部や頭蓋底の骨は神経堤細胞由来であり、我々は神経堤細胞由来である頭蓋骨骨髄間葉系幹細胞(cMSC)について、腸骨骨髄より樹立したMSCと比較して神経系細胞への分化をきたしやすいことを報告した。また、ラットの頭蓋骨から採取したcMSCについて長管骨由来のbMSCと比較して神経保護因子の発現が多く、脳梗塞ラットへの投与実験でも従来のbMSCと比較してより良好な神経学的予後が期待できる点も報告した。さらにこれまでに、ヒト頭蓋骨より樹立したcMSCをラットの脳梗塞モデルに投与し、異種間でのcMSC投与の有効性を報告している。 2019年度は、これまでに報告した手技を用いてラットを用いて脊髄圧座損傷モデルを作成して移植実験を行った。bMSCとcMSCをそれぞれ経静脈投与し、損傷部位でのBDNFとGDNF発現を比較した。いずれもcMSCで有意に発現が強いことが確認できた。 運動評価(BBB scoreとinclined plane test)ではsham群に比較して移植群はいずれも優位に機能が改善し、cMSC移植群が最も良好に改善した。 客観的評価のために運動誘発電位刺激を測定したところ、sham群では波形が消失したままであったが、day14から移植群では波形の回復が認められた。また、振幅改善率はcBMC移植群はbMSC群より有意に高かった。 また、経頭蓋刺激運動誘発電位を安定して測定できる手技が確立できたため、technical noteとして論文作成を開始した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
脊髄損傷ラットで経頭蓋刺激運動誘発電位が測定可能となる手技を確立した。従来法は脳表電極を設置するなど侵襲が大きかったが、低侵襲で安定した波形が得られる方法を確立することができた。 脊髄損傷ラットに頭蓋骨由来骨髄細胞(cMSC)と大腿骨由来骨髄細胞(bMSC)を移植し、運動機能と運動誘発電位の変化を追跡する実験の結果が出ている。cMSC移植群で最もいい結果が出ており、期待通りの結果である。
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Strategy for Future Research Activity |
頭蓋骨由来骨髄細胞の移植効果が確認できたため、微小重力培養下の同細胞移植を行う。 運動機能の改善が電気生理学的にも確認できている。 今後は実際の脊髄損傷病変の組織学的評価や、障害部における抗炎症作用やアポトーシスの抑制など、また、障害局所における神経保護因子や神経成長因子の発現を免疫染色やPCRで確認する。 また、細胞培養による脊髄損傷における抗炎症反応効果の経時的変化を確認し、急性期だけでなく慢性期の移植でも神経機能改善に結び付くかどうかを検証する。
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Causes of Carryover |
本年度は高額機器の購入が主であったため、残金に端数が発生した。このため、残金の6540円を次年度に繰り越しした。 繰り越した残金は令和2年度助成金と合わせ、抗体などの試薬購入の一部として使用する予定である。
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