2019 Fiscal Year Research-status Report
慢性脳低灌流による脳白質障害・認知障害への活性酸素種産生酵素Nox4の役割の解明
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19K09530
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
脇坂 義信 九州大学, 大学病院, 助教 (50631694)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 慢性脳低灌流 / 脱髄 / Nox4 / 脳血管性認知症 / 酸化ストレス |
Outline of Annual Research Achievements |
Nox4ノックアウト(KO)マウスとその野生型マウスに対して慢性脳低灌流を誘導したところ次の6つの結果を得た:1) 慢性脳低灌流の誘導28日目にKluver-Barrera染色とMAG免疫染色で脱髄の程度を評価したところ、Nox4-KOマウス群は野生型マウス群と比較して脳白質脱髄がより高度であった、2) 慢性脳低灌流の誘導28日目に空間認知機能をY字迷路試験で評価したところNox4-KOマウス群は野生型マウス群より有意に認知機能の低下を認めた。一方でwire hang testで評価した運動機能は両群間で有意差を認めなかった、3) 慢性脳低灌流の誘導で脳表の脳血流の低下を認めたが、脳表の脳血流低下率に両マウス郡間で有意差を認めなかった、4) 一方で脳白質領域の微小血管増生をLectineによる免疫染色で評価したところ、野生型マウスでは慢性脳灌流で微小血管が有意に増えたが、Nox4-KOマウスでは有意な血管増生を認めなかった、5) 慢性脳低灌流の誘導28日目の脳白質領域では、野生型マウス群ではNG2やPDGFRαで標識されるオリゴデンドロサイト前駆細胞が有意に増加していたが、Nox4-KOマウス群では有意な増加を認めなかった、6) 慢性脳低灌流の誘導28日目の脳白質領域では、野生型マウス群ではGFAPで標識されるアストロサイト、またIba1で標識されるミクログリアの有意な増加を認めたが、Nox4-KOマウス群ではアストロサイトまたミクログリアの有意な増加を認めなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初はNox4-KOマウスだけでなく脳血管周皮細胞特異的Nox4過剰発現マウスとその野生型マウスに対して慢性脳低灌流モデルを作成して大脳白質病変の脱髄の程度・運動/認知機能を、そしてNox4-KOマウス・脳血管周皮細胞特異的Nox4過剰発現マウスとそれぞれの野生型マウスを用いて、慢性脳低灌流後の脳白質領域の脳血管周皮細胞の数/分布・アポトーシスの有無、また血液脳関門の破綻の程度を評価する予定であった。しかしマウス脳低灌流モデルを安定して作成する手技の取得に時間を要したため当初予定していた実験内容を全て行うことはできなかった。 しかしながら2年目以降に予定してたNox4発現変化とオリゴデンドロサイト前駆細胞の発現の関連について、またNox4低下による脳白質脱髄に関連する因子を見いだすことができた。そのため研究は概ね順調に進展していると判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
今後、1) Nox4-KOマウスとその野生型マウスに対して慢性脳低韓流を誘導した後に、脳白質領域での脳血管周皮細胞の数や分布、脳血管周皮細胞上のPDGF受容体の発現とその活性化レベルや脳血管周皮細胞のアポトーシスの有無、血液脳関門破綻の程度を評価していく、2) Nox4-KOによるオリゴデンドロサイト前駆細胞発現低下が脳白質の脱髄増強の原因の一つであると考えられるため、オリゴデンドロサイト前駆細胞の増殖能やオリゴデンドロサイト前駆細胞からオリゴデンドロサイトへの分化に関与する諸因子について検討を行っていく、3) 脳血管周皮細胞特異的Nox4過剰発現マウスとその野生型マウスに対しても慢性脳低灌流モデルを誘導した後に、大脳白質病変・運動機能/認知機能・脳血管周皮細胞/血液脳関門/微小血管増生について評価を行なっていく、4) 血管周皮培養細胞を用いて、Nox4発現変化が低酸素刺激したでの細胞内シグナル伝達に及ぼす影響を検討していく予定である。
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Research Products
(1 results)