2020 Fiscal Year Research-status Report
慢性脳低灌流による脳白質障害・認知障害への活性酸素種産生酵素Nox4の役割の解明
Project/Area Number |
19K09530
|
Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
脇坂 義信 九州大学, 大学病院, 講師 (50631694)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | 慢性脳低灌流 / 脱髄 / Nox4 / 脳血管性認知症 / 脳血管周皮細胞 / ミクログリア / アストロサイト / オリゴデンドロサイト前駆細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
Nox4ノックアウト(KO)マウスとその野生型マウスに対して慢性脳低灌流を誘導した結果、Nox4-KOマウスは野生型マウスと比較して、1)脳梁での脳白質脱髄がより高度であり、2)空間認知力の低下を認め、3)脳白質領域での微小血管の新生(血管内皮と脳血管周皮細胞の発現)が抑制され、4) 脳白質領域でのオリゴデンドロサイト前駆細胞(OPC)・アストロサイト・ミクログリアの増加が抑制される結果を認めた。 一方、これまでにアストロサイトやミクログリアから放出される栄養因子がOPCの増殖に関与することが示唆されてきている。そのため、Noz4が①OPCの増殖や分化に直接作用している可能性以外に、②Nox4によって脱髄病巣にアストロサイトやミクログリアが浸潤し、これらの細胞による栄養因子によってOPCが増殖また分化してオリゴデンドロサイト発現を促進し、それによる再髄鞘化をもたらす可能性も考えられた。ただしNox4-KOマウスは野生型マウスと比較して慢性脳低灌流後の脳白質において脳微小血管の増生も弱いため、Nox4による血管新生作用の影響も否定できない。 そこで、血管新生の影響を排除するために、cuprizone(CPZ)による薬剤誘発性の脳脱髄モデルを用いて、Nox4がOPCの増殖や分化や再髄鞘化にどのように作用するかを検討した。 その結果、Nox4-KOマウスではCPZ投与中断後の1)OPCの増殖と髄鞘形成が促進されること、2)ミクログリア残存が多く、またミクログリア活性化に関わる因子が増加すること、3)アストロサイト浸潤とアストロサイト活性化因子の発現が増強していること、4) 神経保護・血管新生誘導因子の発現が増加し、脳血管周皮細胞(ペリサイト)の発現が増強すること結果を得た。また5)Nox4は培養OPCの増殖や分化に影響しない結果を得ている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
慢性脳低灌流モデルではNox4が再髄鞘化を促進させる結果を得たが、薬剤誘発性の脳脱髄モデルではNox4が再髄鞘化を抑制するとの相反する結果であった。ただし脳白質領域での脳血管周皮細胞・アストロサイト・ミクログリアの発現亢進が一貫してオリゴデンドロサイト前駆細胞の増殖と髄鞘形成の促進に関連する結果であった。慢性脳低灌流モデルではNox4の発現抑制により血管新生・脳血管周皮細胞の発現の亢進を認めた。この結果は下肢慢性虚血モデルではNox4発現抑制で血管新生・脳血管周皮細胞の発現が亢進する既報の結果と合致している。今後は脳血管周皮細胞の発現増強とオリゴデンドロサイト前駆細胞や再髄鞘化の間の関連とそのメカニズムについて検討を詰めていきたいと考えている。
|
Strategy for Future Research Activity |
慢性脳低灌流モデルではNox4が再髄鞘化を促進させる結果を得たが、薬剤誘発性の脳脱髄モデルではNox4が再髄鞘化を抑制するとの相反する結果であった。ただし脳白質領域での脳血管周皮細胞・アストロサイト・ミクログリアの発現亢進が一貫してオリゴデンドロサイト前駆細胞の増殖と髄鞘形成の促進に関連する結果であった。これまで急性脳虚血モデルを用いた検討で、虚血領域での発現が増加した脳血管周皮細胞がマクロファージ/ミクログリアの動員を誘導して壊死組織(ミエリンデブリス)を処理し、また脳血管周皮細胞がアストロサイトに作用してオリゴデンドロサイト前駆細胞の発現増加と再髄鞘化を促進させることで、組織修復や神経系ネットワーク再構築による内因性機能回復に寄与することを報告してきている。 そのため今後は、Nox4-KOマウスとその野生型からの培養ミクログリアを用いてNox4がミクログリアの増殖やミエリンデブリスの貪食能に関与するか、またNox4-KOマウスとその野生型からの培養脳血管周皮細胞と培養アストロサイトをも用いて脳血管周皮細胞/アストロサイト/オリゴデンドロサイト前駆細胞の相互作用についても検討していく予定である。
|
Causes of Carryover |
頭蓋助成金をおおむね使用したが、592円の残額が生じた。2021年度分の交付金と合わせて残額が生じないように、支出内容を注意深くみながら使用していく予定である。
|