2020 Fiscal Year Research-status Report
難治性・浸潤性下垂体腺腫に関与する転写因子PITX2の機能解析
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19K09536
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
三輪 点 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 講師 (20365282)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
戸田 正博 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 教授 (20217508)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 下垂体腺腫 / 浸潤 / 海綿静脈洞 / PITX2 / 上皮間葉系転換 |
Outline of Annual Research Achievements |
下垂体腺腫は、鞍上部に生じる良性腫瘍であるが、海綿静脈洞に強く浸潤する傾向があり、しばしば治癒困難となる。その場合、手術が困難となり、残存病変から再発をきたすことがある。小型の下垂体腺腫でも海綿静脈洞浸潤を起こすことが多く、特徴的な所見の一つと言える。しかし、下垂体腺腫の浸潤性に関与する分子は未だ明らかでない。申請者らは、下垂体腺腫の浸潤性を腫瘍の単純な増殖性とは異なる性質であると考え、新たな因子を探索した。その結果、下垂体の器官発生期(初期)にのみ発現する転写因子PITX2が、浸潤性の下垂体腺腫で発現し、海面静脈洞への浸潤性と強く関与している結果を得た。また、下垂体腺腫の増大と上皮間葉系転換は密接に関係しており、発生段階ではPITX2と上皮間葉系転換マーカーの関与も報告されている。そこで本研究では、下垂体腺腫におけるPITX2のさらなる機能解析を行い、難治性の浸潤性下垂体腺腫に対する新たな治療標的としての可能性を検討する。これまで下垂体腫瘍におけるPITX2の機能解析をした研究はなく、極めて独創的である。2017年に改訂されたWHO分類においても、下垂体腺腫における海綿静脈洞浸潤が重視されており、注目されている研究分野である。本研究課題遂行のためには、ヒト下垂体腺腫検体の確保が重要であるが、当院では下垂体腺腫を扱う事が多い。下垂体腺腫は、他の悪性腫瘍と生物学的動態が異なるため、培養条件の検討は極めて重要である。安定した培養の後、標的となるPITX2発現細胞株の樹立を行い、in vivo解析を最終的に行っていく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度、「非」機能性下垂体腺腫 60例のPITX2発現解析を行い報告した。本年度はまず当院が保有する機能性(ホルモン産生性)下垂体腺腫50例に対して同様に発現解析を行い、臨床経過(海綿静脈洞浸潤や、増大速度、再発率等)との相関を検討した。現在論文執筆中である。次に、引き続き海綿静脈洞浸潤を認める下垂体腺腫検体を、血清無添加培地にEGF、bFGF入りの低接着フラスコで初代継代培養することを試みた。初代継代の際に細胞を分離分散すると低接着フラスコ内で安定増殖をさせることは容易ではなかった。分離分散溶液をTrypsin、Accutase、TrypLE Select など様々試し、現在Accutaseの濃度調節を行い、フラスコ内で増殖する細胞を得始めている。本プロトコールで海綿静脈洞浸潤あり・なし症例から細胞株を得つつある。
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Strategy for Future Research Activity |
PITX2高発現の細胞集団、低発現の細胞集団の獲得を目指す(PITX2 high expressed population [PHP]/ PITX2 low or negative expressed population [PLP])。これら二つの細胞株を用いて、自己複製能、コロニー形成能を比較することで造腫瘍能を評価する。さらに細胞遊走・浸潤の評価を、ThinCert Tissue Culture Insert を用いたTrans-well assay等を用いたassayにより解析する。さらに、下垂体幹細胞マーカーとして過去に報告のあるS-100βやSox2等の発現とPITX2の発現との相関を解析する。さらに、順調にPHP、PLP株が樹立できた後、in vivoでの造腫瘍能を比較解析する。また、PHP株にSiRNAを用いてPITX2がノックダウンした後、この細胞株を免疫不全マウスの皮下に移植することで、直接的に生体内でのPITXの腫瘍浸潤に与える影響を評価する。
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Causes of Carryover |
(理由)効果的に物品調達を行った結果であり、さらに、培養に相応しい初発症例が予定より少なかったという傾向もある。次年度の研究費と合わせて試薬・消耗品などの購入に充てる予定である。 (使用計画) 次年度は、より細胞培養を行っていくため、幹細胞培養関連試薬、幹細胞用低接着フラスコを購入する予定である。また細胞樹立後は、in vivo解析に重点を置くため、動物購入・飼育費に費用がかかる。また本治療計画はヒト細胞を用いるため、動物は最低でもBALB/C由来のNude mouseである必要があり、場合によってはNOD/SCID mouseも購入する可能性がある。以上含め、その他、培養関連試薬、組織解析の関連試薬を中心に購入予定である。
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