2019 Fiscal Year Research-status Report
術者の視線データを指標とした手術トレーニング方法と視線計測装置の開発
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19K09538
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Research Institution | Aichi University of Technology |
Principal Investigator |
山本 雅也 愛知工科大学, 工学部, 助教 (60824133)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
泉 孝嗣 名古屋大学, 医学系研究科, 准教授 (90467291)
小濱 剛 近畿大学, 生物理工学部, 准教授 (90295577)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 手技トレーニング / 脳血管内治療 / 視線計測 |
Outline of Annual Research Achievements |
医療の質と安全性向上のため、脳血管内治療のトレーニングをより効率的な形へと発展させることを目的とし、新しいトレーニングの手法の一つとして眼の動きを指標としたトレーニングに着目している。生体情報工学の分野においてエキスパート(熟練者)とノービス(初学者)の間には眼の動かし方(視線情報)に差があるという知見があり、ノービスがエキスパートの視線を真似ることでラーニングカーブが優位に向上することが示唆されている。そのため、本研究では次に記すような計画のもと、術者の視線データを指標とした脳血管内治療のトレーニング方法の開発と、本トレーニングの普及を想定した視線計測装置の開発を行う。2019年度には、脳血管内治療を行う術者の視線計測を行うため市販の計測装置などの備品購入と計測環境を整え、手術環境下における計測のトライアルを実施する。2020年度には、購入した眼鏡型視線計測装置を用いて、実際に脳血管内治療を行う術者の視線データを計測しデータの取得、解析・分析を実施し、手術トレーニングへの応用を検討する。同時に、本トレーニングを術者が眼鏡型の視線計測装置を装着せずとも行えるよう、非接触で視線計測を可能な装置の開発を進める。2021年度は主に眼鏡型視線計測装置を用いて術者の視線データを指標とした手術トレーニングに関する論文執筆や学会発表の活動を行う。また、並行して開発を進める非接触視線計測装置においても本トレーニングを実施し、普及の可能性を探る。 2019年度の研究実績は、おおむね順調に進展していると考えており、詳細を以降の項目において記す。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「術者の視線データを指標とした手術トレーニング方法」の開発のため、視線データを取得に必要な眼鏡型視線計測装置および、計測装置を接続・制御するためのパソコン、その他周辺機器を購入した。これらの装置を用いて手術室における計測環境の構築を行った。手術室における計測環境の構築とは、通常、本装置による計測は装置と制御パソコンがケーブルで接続されるため、ケーブルが術者の移動や手技の妨げとなり手術への負担になる可能性がある。そこで、第一に計測装置とスマートフォンを有線で接続し、ポケットなど術者の移動や手技を損なわない箇所に収めた。次にスマートフォンと制御パソコンを無線環境下で通信させ遠隔操作による計測を可能とすることで、ケーブルが術者の移動や手技の妨げとならないような環境を構築した。以上の環境構築と並行して、愛知工科大学の実験室にて手術室での実験を想定した予備実験を行い、実験者が視線計測に必要な眼球撮影カメラの調整や実空間と計測装置の座標を調整するためのキャリブレーションの工程などを正確に短時間で行えるようトレーニングを行い、手術外の時間を短縮できるようにした。以上をふまえ実際の手術中の術者の視線データを取得した。取得したデータを解析したところ,注視箇所の座標系が合わない課題はあるが,ある工程において指導医と訓練医の注視行動に違いがあることを確認した. 並行して進めている「安価でロバストな視線計測装置」の開発では、市販されているデプスカメラを購入した。物体の距離計測が可能なデプスカメラの機能と画像処理技術を組み合わせることで、眼鏡型視線計測装置のように装着することなく、非接触で精度の高い視線計測を試みる。カメラで取得可能な映像を用いて、一般的な視線計測を行うためには8つの画像処理工程がある。現時点では3工程までを組み込みテストを完了した。
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Strategy for Future Research Activity |
実際の手術中における術者の視線データ取得を実施した結果、いくつかの課題が明らかとなった。1つ目は、手術直前の貴重な時間の中で、想定以上に即座に視線計測装置のキャリブレーションを実施する必要があること。2つ目は、手術中に術者が装着する装備品との干渉などにより、視線計測装置の位置ズレが発生し、計測データの信頼性が低下すること。3つ目は、スマートフォンの個体差によって長時間計測に支障があること。4つ目は、計測装置の設定によっては、視線計測装置が出力するデータの中に、観察したい実空間上の座標値が直接出力されないこと。 上記課題は次に示す策により、課題解決をすることが研究の推進方策である。1つ目の課題解決は、手術に必要な情報を出力するモニタの四隅と中央に実験者がマーカーをかざすことで実施したキャリブレーションを、予めモニタにマーカーを設置することで実験者がマーカーを持って移動する時間を短縮する。2つ目の課題解決は、術者の裸眼に近い順に視力矯正眼鏡、視線計測装置、放射線保護眼鏡という装備品を減らすこと。具体的には放射線保護眼鏡に視線計測装置を直接アドオンすることで装備品が減る形となり、位置ズレ低減に効果が期待できる。3つ目の課題解決は、事前に長時間計測のテストを行うことで装置の相性調査を行い、装置の組み合わせを決定する。4つ目の課題解決は、座標変換の演算を用意し、実空間上の座標が確実に計測できているかのテストを実施する。 並行して進めている「安価でロバストな視線計測装置」の開発に関する課題は、開発速度の問題程度であるため、開発へのリソースを従来以上に注ぐことで開発速度を上げることを研究推進方策とする。
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Causes of Carryover |
想定より早い段階で実際の手術中のデータが取得できたため,解析の結果に応じて計測装置を購入した方が今後の研究成果創出に優位であると考えたため,購入のタイミングを先延ばしとしている. また,同様の理由で,データの解析に時間を重点的に使っているため,各種打ち合わせのタイミングも先延ばしとしている.2020年度以降の活動において本予算を計画していた経費に使用する.
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