2019 Fiscal Year Research-status Report
腱板断裂に対するヘッジホッグシグナルを介した修復促進治療の開発
Project/Area Number |
19K09554
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
唐杉 樹 熊本大学, 大学院生命科学研究部(医), 講師 (80706482)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
徳永 琢也 熊本大学, 病院, 医員 (60759520)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 腱板断裂 / 腱板修復術 / 再断裂 / Hedgehog(Hh)シグナル |
Outline of Annual Research Achievements |
腱板断裂は肩関節の痛みや機能障害の原因となる疾患である。治療として腱板修復術が行われた場合、術後早期の再断裂はまれでなく、現状では長期の治療期間を要している。腱骨間の不十分な修復能が再断裂発生の一因とされ、再断裂の減少および治療期間の短縮を目的とした修復促進治療への要望は高い。近年、腱付着部の発生過程の解析によってHedgehog(Hh)シグナルが重要な働きをもつことが報告された。また、申請者らは腱板付着部損傷後の修復過程における内在性のHhシグナルは限定的であることを示唆させる先行研究結果を得ている(H30-31若手研究)。本研究ではこれらの知見を元に腱板修復過程におけるHhシグナルの活性化による修復促進効果を検証するとともに修復促進のメカニズムの解明を目指している。Hhシグナルアゴニスト(SAG) の投与による腱板修復促進効果、および成長因子FGF-2との共投与による効果を、ラット腱板修復モデルを用いた実験にて明らかにする予定である。 現在、SAGを投与することによる腱板修復部におけるHhシグナル活性化の評価を行っている。麻酔下に成熟SDラット(20週齢)の左肩棘上筋腱を切離し、上腕骨付着部線維軟骨を除去後、断端をプロリン糸で骨に修復する。SAG(1mM)を徐放担体(ゼラチンハイドロゲル)に含浸させ左肩に投与する群とPBSのみ投与した対照群を作成し、術後1週、2週に肩組織を採取し組織評価を行っている。組織学的評価を行い、修復組織中のHhシグナル活性化を評価している。 腱板修復部でのHbシグナル活性の実際が明らかになることで、腱修復に関わる一つの要因がさらに明らかとなることが期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今後、以下の5つの実験系を遂行する予定を立案している。SAG 投与による① 腱板修復部におけるHhシグナル活性化の評価 ② 腱板修復組織の力学強度への影響の評価 ③ 腱板修復部組織学的所見への影響の評価 ④ 腱板修復過程における修復部間葉系細胞への影響に対する免疫組織学的な評価 これらの実験の結果を受けて ⑤ FGF-2とSAGの共投与による腱板修復への影響の評価 現在、この研究の軸となる上記実験の①に取り組んでいる。ラット腱板修復モデルの評価ではSAG投与によるHhシグナル活性の検出を行っており、この手技が確立し、かつ安定した結果が得られた場合、以降②以下の実験を円滑に進行することが可能となる。現時点ではモデルの評価のばらつきが認められるため、自己点検による評価は「おおむね順調に進展している」とした。
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Strategy for Future Research Activity |
上記の実験のうち、①腱板修復部におけるHhシグナル活性化の評価について、ラットモデルの個体のばらつきがないことを確認した上で、②-⑤の実験へと進めていく。①の実験系の確立のためには、SAGの濃度など考慮が必要な要因が未だ存在していると考えており、至適条件が得られる手法を探索中である。われわれがこれまでに行った過去の実験において、②-⑤の研究を遂行するための実験手技や実験設備は整っており、今後の研究進行に支障は無いと考えている。
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