2021 Fiscal Year Research-status Report
間葉系幹細胞シートを用いた神経束移植における新規治療法の確立
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19K09559
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Research Institution | Nara Medical University |
Principal Investigator |
田中 康仁 奈良県立医科大学, 医学部, 教授 (30316070)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
増田 佳亮 奈良県立医科大学, 医学部附属病院, 研究員 (60790376)
清水 隆昌 奈良県立医科大学, 医学部, 学内講師 (70464667)
奥田 哲教 奈良県立医科大学, 医学部, 助教 (80646167)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 間葉系幹細胞シート / 末梢神経 / 神経再生 / 血管柄付き神経 / 自家神経移植 |
Outline of Annual Research Achievements |
神経再生誘導管(以下人工神経)や同種神経は、近年自家神経に代わる新たなマテリアルとして開発され、すでに臨床応用されているが、再建可能な神経の欠損長は数㎝と限界がある。再生能力を高めるために、これらのマテリアルに人工多能性幹細胞(induced pluripotent stem cell;iPS細胞)や各種成長因子を添加させる試みが行われているが、自家神経移植に匹敵するほどの再生能力を獲得できず、依然として改良の余地があるのが現状である。 自家神経は優れた神経再生能を有するが、重要な機能を担う太い神経幹の再建は容易ではない。実際の臨床では、機能障害の少ない細い知覚神経を数本束ねて移植する『神経束移植(cable graft法)』が行われるが、良好な神経再生を獲得するために必要とされるドナー神経の数については未だ不明な点が多い。採取するドナー神経の量を最少とし、最大限の神経再生を得るためには、移植した神経の再生能を最大限に引き出す必要がある。 組織移植では組織の血流をいかに維持するかが問題となるが、『神経束移植(cable graft法)』も例外ではない。我々は、再生医療の技術を用いて作成した『間葉系幹細胞シート』が高い血管新生能を有することに着目した。『神経束移植(cable graft)』に組み合わせ、移植自家神経に血流を付与することで、『ハイブリッド型神経束移植(tissue engineering nerve cable graft)』を作成し、優れた軸索再生能を有する新規治療法を確立し、臨床応用するための基礎的研究を行う。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当教室では、骨髄間葉系細胞(Bone Marrow Stem/Stromal Cells ; BMSCs)を採取培養し、シート状 に採取する『BMSCシート』の再生医療分野における有用性を報告してきた。本研究でも、自家神経の移植片に旺盛な血流を付加させるために、再生医療の技術を用いて作成した『BMSCシート』が不可欠である。しかし、本年度作成を試みた『BMSCシート』は、同様の方法を用いていたにもかかわらず、シート状のマテリアルとして採取できない問題が起きた。作成工程を詳細に調査した結果、培養に用いていた15%ウシ胎血清(FBS)が、これまでと変更になった点が原因と推察された。再度『BMSCシート』の作成をやり直し、今後の実験を継続していく予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
坐骨神経欠損モデルをラットで作成し、以下の5つの実験群を作製する。Fischer344ラットの右坐骨神経に約15mmの欠損モデルを作成。欠損部を以下のモデルで再建する。①同系ラットの腓腹神経(20mm)採取し遊離自家神経移植 Autologous nerve群;AN群、②同系ラットの腓腹神経(20mm)を3本採取し神経束移植 Cable graft群;CG群、③②で周囲を『BMSCシート』で被覆 Hybrid cable graft群;HCG群、④坐骨神経の20mmの欠損を、再建せずにそのまま放置 Negative control群;NC群 ⑤皮膚切開のみを施し、神経に操作を加えない Positive control群;PC群、評価として、術後3, 7, 10, 14日で、自家神経内の軸索再生の評価を免疫組織学的行う。(軸索再生;Tuj-1,GAP43抗体、神経細胞;NeuN抗体、血管新生;αSMA抗体、グリア瘢痕;GFAP,CS56抗体、再髄鞘化;MBP抗体) 。M2 マクロファージの局在をCD206 、arginase-1(Arg1)を用いて行う。血管新生の評価はICG(Indocyanine green)を用いた近赤外線蛍光イメージング手法を用いてラットに尾静注したICGを赤外線カメラで撮像することで行う。さらに術後4, 8, 12, 16週で、前脛骨筋の筋力、筋実質量、電気生理学試験で複合筋活動電位.(compound muscle action potential;CMAP)、足関節の可動域、腓骨神経の組織形態計測を行い、神経再生を評価する。
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Causes of Carryover |
コロナ禍によって、海外の学会参加がなくなったことや、『BMSCシート』の作成に問題が生じて実験の遂行に影響を与えたことが原因であると考えている。
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