2019 Fiscal Year Research-status Report
血中IGF1低下による新規サルコペニアモデルの樹立とその治療法の開発
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19K09580
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
佐藤 結子 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 研究員 (70445443)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 整形外科 |
Outline of Annual Research Achievements |
超高齢社会の到来により、加齢とともに筋量と筋力がともに低下し、運動機能である握力や歩行能力の低下をきたすサルコペニアを発症する症例が増大している。サルコペニアは運動能力の低下から高齢者の日常生活動作レベルの低下や、寝たきり、自立性の低下といった原因となるため、その対策は重要である。しかし、サルコペニアは加齢という様々な要因が関与する現象に付随して発症するため、現時点ではサルコペニアの発症機構は明らかではなく、有効な予防法も開発されていない。そこで、加齢とともに血中濃度が減少し、かつ筋肉の成長因子として知られているInsulin like growth factor 1 (IGF1)に着目し、IGF1濃度の減少や欠乏がサルコペニア発症の機序となり得るかを検討し、さらにその治療法を開発することとした。アダルトにおいてIGF1濃度が特異的に減少するモデルマウス(IGF1 cKOマウス)を樹立し、血中のIGF1濃度を測定したところ、コントロールマウスの半分程度の濃度となることが明らかとなった。これは、ピーク時の濃度が加齢により半減するヒトの加齢変化を模したモデルとなり得ることが明らかになった。本モデルを用いて、IGF1という1つの因子の抑制により、筋量と筋力がともに減少するサルコペニアモデルとなり得ることを見出した。つまり、IGF1あるいはそのシグナルの増強がサルコペニアの治療法となり得ることが示唆された。そこで、IGF1受容体に結合するペプチドをスクリーニングし、複数の候補クローンの同定にすでに成功した。現在、同定された候補クローンの活性をin vitroで検証しているところである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
すでに、IGF1という単独の因子に着目し、その血中濃度の減少が筋量と筋力がともに減少するサルコペニアの原因となり得ること、IGF1あるいはIGF1シグナルの増強がサルコペニアの治療法となり得ることを解明し、2019年度中に論文で報告することができた(Sci Rep 2019)。さらにこの成果を受けて、IGF1受容体に結合するペプチドのスクリーニングを行い、複数のクローンの同定に成功し、すでにこの中の複数のクローンについてIGF1様の作用を有することを見出している。以上のことより、研究がおおむね順調に進展していると判断している。
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Strategy for Future Research Activity |
すでに同定されているペプチドクローンについて、in vitroにおけるIGF1様の効能について再現性の検証実験を行う。再現性が得られたクローンについては容量依存性の確認や、下流分子の発現誘導効果、シグナルの活性化誘導能等、様々な角度から効果を検証する。並行して、新たなクローンのスクリーニングや同定、二量体化等の修飾効果等についても検討を行う。効能に関する評価系で最も効果が高かったものについては、in vivoのサルコペニアモデルにおいて効能評価を行う。また、IGF1シグナル系に対するペプチド以外の経路による活性化法についても合わせて検討を進める。
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[Journal Article] Oral administration of N-acetyl cysteine prevents osteoarthritis development and progression in a rat model.2019
Author(s)
Kaneko Y, Tanigawa N, Sato Y, Kobayashi T, Nakamura S, Ito E, Soma T, Miyamoto K, Kobayashi S, Harato K, Matsumoto M, Nakamura M, Niki Y, Miyamoto T.
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Journal Title
Sci Rep.
Volume: 9
Pages: 18741
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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[Journal Article] CTLA4-Ig directly inhibits osteoclastogenesis by interfering with intracellular calcium oscillations in bone marrow macrophages.2019
Author(s)
Okada H, Kajiya H, Omata Y, Matsumoto T, Sato Y, Kobayashi T, Nakamura S, Kaneko Y, Nakamura S, Koyama T, Sudo S, Shin M, Okamoto F, Watanabe H, Tachibana N, Hirose J, Saito T, Takai T, Matsumoto M, Nakamura M, Okabe K, Miyamoto T, Tanaka S.
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Journal Title
J Bone Miner Res.
Volume: 34
Pages: 1744-1752
DOI
Peer Reviewed
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[Journal Article] Insulin-like growth factor-I is required to maintain muscle volume in adult mice.2019
Author(s)
Nakamura S, Sato Y, Kobayashi T, Oike T, Kaneko Y, Miyamoto K, Funayama A, Oya A, Nishiwaki T, Matsumoto M, Nakamura M, Kanaji A, Miyamoto T.
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Journal Title
J Bone Miner Metab.
Volume: 37
Pages: 627-635
DOI
Peer Reviewed