2020 Fiscal Year Research-status Report
Fracture treatment intervention targeting Wnt10a
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19K09587
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Research Institution | University of Occupational and Environmental Health, Japan |
Principal Investigator |
王 克ヨン 産業医科大学, 教育研究支援施設, 准教授 (30369053)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 骨再生 / 創傷治癒 / Wnt10a |
Outline of Annual Research Achievements |
骨折治癒の過程は、炎症期を経て、仮骨形成期、リモデリング期へと移行する。各段階で一連の生物学的反応が生じており、その詳細なメカニズムは未だ明らかではない。我々は、Wnt10a が線維芽細胞の増殖因子であり、主に骨膜の修復や骨膜性仮骨の形成において重要な役割があると考えている。本研究の目的は、骨折治癒過程においてWnt10a がどのような役割を担っているのか明らかにすることである。我々は、Wnt10a 遺伝子ノックアウト(KO)マウスを作成し、本研究はWnt10a KOマウスを用いて以下 の検証を行う。 検証1)骨折モデルを用いて骨折治癒過程における Wnt10a KOマウスの表現型 を形態学的・組織学的に評価する。 検証2)骨折修復部位特異的な発現遺伝子の解析を検討し、骨折治癒過程におけるWnt10aの役割を評価する。 検証3)Wnt10a が骨折治癒過程において重要な役割を担っているとしたら、その補充により、骨折治癒は改善・促進することが予想される。昨年度では(2019年度)骨折モデルを用いて検証を行い、骨折治癒過程におけるWnt10aの役割を証明された。Wnt10a遺伝子欠損マウスの骨再生能力が低下し、海綿骨の骨量の減少も確認された。今年(2020年度)、昨年度の成果を踏まえて、骨折治癒過程における Wnt10a の役割について遺伝子発現レベルで検討した。Wnt10a KOマウスでは、骨膜修復遅延や仮骨形成不全を認めた。新生骨膜や仮骨に限定した発現遺伝子の解析を行うため、Laser microdissection法による骨折修復部位の新生骨膜、仮骨などの組織を分けて回収し、特異的な遺伝子の発現をReal-Time PCR法にて解析を行い、また、蛋白質の発現も検討した。Wnt10a欠損マウスの骨芽細胞分化マーカーであるRunx2、Osteocalcin、OsterixとType I collagenの発現量は野生型マウスに比べて著明に減少していることが明らかとなった。Wnt10aは骨膜の修復や仮骨の形成に対して重要な役割があると証明した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
昨年度と同様の方法でマウスの骨折モデルを作製し、術後定期的に(1週、2週、3週間)骨折部位の修復状況をmicro-CTで撮影して経時的の変化を定量化した。屠殺したマウスの骨折部位の組織標本を作成し、HE染色と免疫染色法を用いて組織学的の評価を行った。Laser microdissection法による修復部位の新生骨膜、仮骨などの組織を分けて回収し、特異的な遺伝子の発現をReal-Time PCR法にて解析を行った。病変部位の蛋白質の発現をWestern blotting法で検討した。Wnt10a欠損マウスの骨芽細胞分化マーカーであるRunx2、Osteocalcin、OsterixとType I collagenの発現量は野生型マウスに比べて著明に減少していることが明らかとなった。Wnt10aは、骨膜の修復や仮骨の形成に対して重要な役割が確認した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後、予定した計画を進行する。 大腿骨の骨幹部にドリルで径1.0 mm の穴をあけ、人工骨を挿入し、骨再生状況を確認する。Wnt10aの発現を促進する物質を含む人工骨の補充による骨折治癒過程の変化を観察し、難治性骨折の治療改善法を探究する。難治性骨折の治療の際には創傷治癒の問題も伴ってくる。広範な皮膚欠損を伴う開放骨折に関しては、軟部組織の治癒状況が機能予後を左右する。以前我々の研究でWnt10aが線維芽細胞の増殖の促進物質であり、本研究の学術的独自性と創造性は、創傷と骨折における双方の問題を同時に一つの分子で解決しようと試みているところにある。
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Causes of Carryover |
理由:試薬の購入とマウス購入金額が予定額より安くなっており、予算から231,122円が余った。 使用計画:2021年度の研究物品費用として利用する。
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