2019 Fiscal Year Research-status Report
iPS細胞由来骨芽細胞系細胞の特性および機能解析に基づいた骨形成制御機構の解明
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19K09598
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
宮本 諭 大阪大学, 医学系研究科, 特任研究員 (40239439)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
名井 陽 大阪大学, 医学部附属病院, 教授 (10263261)
吉田 清志 大阪大学, 医学系研究科, 助教 (50645570)
岡本 美奈 大阪大学, 医学部附属病院, 助教 (50457008)
吉川 秀樹 大阪大学, 医学系研究科, 理事・副学長 (60191558) [Withdrawn]
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 骨芽細胞 / 分化誘導 / iPS細胞 / 遺伝子発現 |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度の目標は、マウス iPS細胞から分化誘導を行い作製した骨芽細胞系細胞の特性を明らかにすることであった。具体的な検討内容として、作製した骨芽細胞系細胞 (OLC) と骨髄由来間質系細胞 (ST2)、胚繊維芽細胞 (C3H10T1/2) 骨芽前駆細胞 (MC3T3-E1) 、成熟骨芽細胞~骨細胞様細胞 (IDG-SW3) などの細胞株と比較してどの分化段階にあるか評価を行った。 遺伝子発現解析の結果では、骨芽細胞系細胞OLCは、IDG-SW3よりMC3T3-E1に近い遺伝子発現傾向を示しており、成熟骨芽細胞から骨細胞様細胞に至る前段階である骨芽前駆細胞様の分化初期段階に近い特性を有していた。OLCは、特異的にHoxb4、Hob5およびHoxb6をはじめとするHoxb遺伝子群を高発現しており、骨髄由来間質系細胞ST2に似たユニークな特性を示した。またOLCは、MC3T3-E1と同様にALP、Podoplanin、Sp7、Foxc1を高発現して内軟骨性骨化様分化を呈する特徴をもつことが明らかになった。 骨分化誘導培地にてALP活性および石灰化結節能を解析した結果、ALP活性についてはOLCはMC3T3-E1に近い活性値を示したのに対し、石灰化結節能は成熟骨芽細胞以降の分化段階であるIDG-SW3に近い結節能を示すことが分かった。 OLCがHoxb遺伝子群の特異的な発現を示す一方、Hoxb遺伝子間に存在し、骨芽細胞分化に沿って分化初期段階で発現上昇する長鎖ノンコーディングRNA (lncRNA)を今回初めて確認した。このlncRNAの発現傾向はHoxb遺伝子群とほぼ同様でああることが分かった。lncRNAは、骨芽細胞分化特異的な脱メチル化酵素および下流の骨分化関連遺伝子を調節している可能性が高いのではないかという仮説を立て、現在siRNAによる発現抑制を行いlncRNAの機能解析を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
作製した骨芽細胞系細胞の分化段階および細胞特性の違いが、遺伝子発現解析および機能解析により現在明らかになりつつある。得られた成果の順序により、計画が多少前後する部分もあるが、おおむね研究計画通り順調に遂行していると思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
近年度は、昨年度に引き続き分化誘導モデルを確立し、さらに詳細な解析を進めていく予定である。骨芽細胞系細胞は、骨髄の前駆細胞に由来し、骨芽前駆細胞から骨芽細胞へ分化するとされている。発生期と成体の骨芽前駆細胞や骨芽細胞との関係、また骨芽細胞の分化段階と骨形成能との関係について明らかにしていく。分化誘導モデルにより発生期レベルと成体の骨芽細胞や骨芽前駆細胞の関係について、分子動態を解析する。未分化性を維持する細胞として骨芽前駆細胞(静止型、増殖型)と分化能および骨形成能をもつ細胞としての成熟骨芽細胞(活性型)の違いおよび特性を解明する。とくに骨芽細胞分化を制御する未知の因子を解明すべく、lncRNAの機能解析に焦点を当て、CRISPR/Cas9による欠失 (Loss-of-function)、あるいはRNA発現ベクターによる過剰発現 (Gain-of-function)についても今年度から着手する予定である。 分化段階および細胞特性が明らかになった骨芽細胞系細胞とハイドロキシアパタイトscaffoldを用いて、ハイブリット培養人工骨を作製し、それらを実験動物の皮下へ順次細胞移植していく予定である。マイクロCT解析およびHE染色、免疫染色により組織学的に骨再生能を評価する。腫瘍形成などの安全性評価については、分化誘導後から最低4週~6週以上の維持培養期間、移植後8週~12週までの経過観察期間を経て行う予定である。
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Causes of Carryover |
おおむね予定通りの支出となったが、一部試薬物品の購入に際して、輸入品であったため発注、納品が次年度に繰り越された。
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