2019 Fiscal Year Research-status Report
Novel treatment strategy based on molecular mechanisms of various diseases causing low back pain
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19K09613
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Research Institution | National Defense Medical College |
Principal Investigator |
千葉 一裕 防衛医科大学校(医学教育部医学科進学課程及び専門課程、動物実験施設、共同利用研究施設、病院並びに防衛, 病院 整形外科, 教授 (80179952)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 椎間板 / 椎間板変性 / 動物モデル / 脊椎腫瘍 / 悪性骨・軟部腫瘍 / 骨肉腫 / 滑膜肉腫 |
Outline of Annual Research Achievements |
椎間板変性における酸化ストレスの分子作用機序を解明し、新しい治療開発に資する知見を収集するため、まずラット尾椎椎間板に種々の径の穿刺針を刺入し、椎間板変性モデルを作成した。その結果、穿刺群では非穿刺対照群と比較し、活性酸素種のマーカーであるNitrotyrosine陽性細胞数が増加した。また、採取椎間板組織おける遺伝子発現変化を解析したところ、2型コラーゲンやアグリカンなどの細胞外基質タンパクのmRNAの発現が抑制され、TNFα、COX-2など炎症性サイトカインのmRNA発現が亢進していた。しかし、こうした結果の再現性が不十分であった。その原因として穿刺によって線維輪穿孔部から髄核組織の多くが脱出してしまうことが考えられた。そこで、放射線照射により、線維輪に損傷を与えること無く、髄核変性を誘導するモデルの作成にとりかかった。ラット尾部に4-8グレイの放射線を照射し、4-8週後に組織学的解析を行った。照射群ではアルシアンブルーによる染色性の低下、髄核細胞数の現象,髄核の線維化が観察され、遺伝子発現解析でiNOS、TNFα、IL-1βなどのmRNAの発現が上昇するとの結果が得られている。 脊椎腫瘍に対する新たな低侵襲治療開発の前段階として、原発性悪性骨・軟部腫瘍に対する各種薬剤の抗腫瘍効果、肺転移抑制効果を検討した。マウス骨肉腫LM8細胞株モデルに対してDNAのマイナーグルーブに結合しDNA複製、RNA転写の抑制をするトラベクテジンの腫瘍作用を検討したところ、in vitro、in vivoともに従来の標準的抗腫瘍剤であるドキソルビシンと同程度かより強い作用を有することが明らかとなった。また、微小管形成阻害薬であるエリブリンも滑膜肉腫の細胞株(in vitro)ならびに同細胞移植マウスモデル(in vivo)においてドキソルビシンに比し著しく強い抗増殖抑制作用を示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
今までの実験で使用してきたラット椎間板穿刺モデルは、多くの先行研究で使用されているが、その結果の再現性に問題があった。われわれの組織学的解析では、椎間板穿刺針の内腔に何らかの組織が採取されることが判明した。そこで内腔の組織を回収し、組織学的に観察したところ、髄核由来の組織であることが明らかとなった。これは使用した穿刺針の径に関わらず観察されており、本モデルでは不可避の現象と考えられた。穿刺後髄核組織自体が脱出しまう可能性があるため、本モデルは必ずしもヒト椎間板変性のモデルとして適切ではないことが示された。そこで現在、放射線照射によって線維輪を損傷しない方法での椎間板変性モデルの確立を模索している。照射群ではアルシアンブルーによる染色性の低下、髄核細胞数の減少、髄核の線維化などの組織学的変化や予備的な遺伝子発現解析でiNOS,TNFα、IL1βなどのmRNAの発現上昇等の変性に類似する所見が見られており、その再現性を確認するとともに、ヒト椎間板の病理組織と比較検討し、本モデルの妥当性を検討中である. 悪性骨・軟部腫瘍に対する各種薬剤の抗腫瘍効果の検討はある程度順調に進んでおり、マウス骨肉腫LM8細胞株のマトリゲル浸潤モデルさらに同細胞を皮下に移植したマウス肺転移モデルを作成し、in vitor、in vivoでのトラベクテジンの抗腫瘍効果、肺転移抑制作用、また、滑膜肉腫細胞株ならびに同細胞移植マウスモデルを用いて、微小管形成阻害薬であるエリブリンの抗腫瘍作用も検討中である。 しかし、今回の新型コロナウイルス感染拡大の影響で2月以降は実験室への入室、特に共同利用研究所への入室が制限され、やや遅れが出始めている。
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Strategy for Future Research Activity |
放射線施設・装置の使用を含めた実験の効率化の観点から、放射線照射による椎間板変性モデルは効率的とは言えない。これにかわる再現性のある椎間板変性モデルの確立が望まれる。そこで髄核に豊富に存在するプロテオグリカン中のコンドロイチンやコンドロイチン硫酸を特異的に分解するグリコサミノグリカン分解酵素コンドリアーゼの供与を交渉中である。本酵素を椎間板内に注入し、プロテオグリカンを特異的に分解し髄核の抱水能を低下させて椎間板内圧を減じることで、加齢に伴う退行変性により近い椎間板変性モデルが作成可能と考える。本モデルを用いて、酸化ストレス関連分子の発現を解析し、椎間板変性における酸化ストレスの関与を詳細に解明する。さらにN-アセチルシステインなどの抗酸化剤の椎間板変性治療への応用の可能性を模索する。 腫瘍実験では、トラベクテジンならびにエリブリンの抗腫瘍効果の分子メカニズムの解明を進める。今までの実験でトラベクテジンでは、AKT-mTOR経路は恐らく影響を受けないことが示唆された。今後は、細胞骨格の変化、Rhoキナーゼ関連のシグナルの解析や肺転移に関係することが示唆されているケモカイン発現解析、遺伝子発現プロファイルのマイクロアレイによる解析などを実施する予定である。エリブリンでは、腫瘍血管の再構築のメカニズム、腫瘍血管再構築による低酸素状態・ドラッグデリバリーの改善のメカニズムを中心に検討を進める予定である。
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Causes of Carryover |
一部調達予定であった備品がCOVID-19感染拡大のため輸入停止となり、調達不能となったため。 次年度、感染状況が落ち着き次第、調達する予定である。
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Research Products
(14 results)