2020 Fiscal Year Research-status Report
Novel treatment strategy based on molecular mechanisms of various diseases causing low back pain
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19K09613
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Research Institution | National Defense Medical College |
Principal Investigator |
千葉 一裕 防衛医科大学校(医学教育部医学科進学課程及び専門課程、動物実験施設、共同利用研究施設、病院並びに防衛, 病院 整形外科, 教授 (80179952)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 椎間板 / 椎間板変性 / 動物モデル / 脊椎腫瘍 / 悪性腫瘍 / 骨肉腫 / 滑膜肉腫 |
Outline of Annual Research Achievements |
椎間板変性モデルとして,マウス尾椎椎間板の穿刺モデルは,これまで広く用いられており,ヒトにおける椎間板変性の病態をある程度再現しうることが報告されている.しかしながら,本モデルの詳細な検討を行ったところ,穿刺の操作自体により,椎間板髄核が脱出,もしくは注射針内に取り込まれることが,比較的頻繁に生じる事が明らかとなった.このため,椎間板髄核の変性を再現するモデルとしては,必ずしも適切ではないと推測された.そこで,これらの欠点を補うため,本年度は,コンドリアーゼを利用した新規ラット椎間板変性モデルの開発に着手した.コンドリアーゼ(商品名ヘルニコア)は,近年,椎間板ヘルニアに対する保険適応を獲得した薬剤であり,椎間板髄核内の主な保水成分であるコンドロイチン硫酸を分解することで,椎間板内圧の低下を誘導する.コンドリアーゼの髄核注入によって生じるこの一連の過程は,ヒトにおける椎間板の変性過程に類似しており,椎間板変性の病態の少なくとも一部を再現し得るものと考えられた.これまでの予備検討から,コンドリアーゼをラット尾椎椎間板に注入することにより,髄核の含水量が低下し,組織学的にもヒト椎間板変性に類似した像を呈することが明らかとなった.また,上記研究と並行し,脊椎腫瘍に対する新たな低侵襲治療開発の前段階として,原発性悪性骨・軟部腫瘍に対する各種薬剤の抗腫瘍効果,肺転移抑制効果を検討した.マウス骨肉腫LM8細胞株モデルを利用し,トラベクテジンの腫瘍作用を検討したところ,本薬剤は肺転移に対し,極めて強力な抑制作用を有することが明らかとなった.また,微小管形成阻害薬であるエリブリンは,滑膜肉腫細胞移植モデルにおいて,重積血管新生を誘導する可能性のあることが明らかとなった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
従来,広く用いられている椎間板変性動物モデルは,ラット尾椎椎間板に注射針を穿刺し,組織損傷に伴う局所の炎症を惹起することで椎間板変性を誘導するモデルである.本モデルでは,ある程度,ヒトにおける椎間板変性の再現が取れるものと考えられており,われわれの研究においても,椎間板穿刺後4-8週後,ヒト椎間板変性に類似した組織像を呈すること,2型コラーゲンやアグリカンなどの細胞外基質タンパクのmRNAの発現が抑制され,TNFα,COX-2など炎症性サイトカインのmRNA発現が亢進することを観察している.しかしながら,穿刺の操作自体により,椎間板髄核が脱出,もしくは注射針内に取り込まれることが,これまでの研究で明らかとなった.これは,これまで定説と考えられた本モデルの病態再現性に一石を投じる知見であり,椎間板変性研究分野において重要な警鐘となると考えられる.また今後,コンドリアーゼを利用した新規ラット椎間板変性モデルを確立することで,本研究分野の進展に大きく貢献し得るものと期待される.悪性骨・軟部腫瘍に対する各種薬剤の抗腫瘍効果の検討も,おおむね順調に進展している.特に,トラベクテジンによる骨肉腫細胞の肺転移抑制能に関しては,極めて再現性の高いデータが得られており,今後本薬剤の骨悪性腫瘍への適応拡大を考える上でも,前臨床試験に相当する研究結果が得られたものと考えられる.また,エリブリンによる腫瘍血管誘導と重積血管新生の関連は,従来全く報告がなく,新規性の高い所見である.特に,エリブリンによる腫瘍血管のリモデリング,腫瘍内低酸素の是正が,比較的短時間で誘導されることを説明し得るデータであり,そのメカニズムの詳細を引き続き検討中である.
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの予備検討から,コンドリアーゼをラット尾椎椎間板の注入にて,組織学的にヒト椎間板変性に類似した病態を誘導し得ることが明らかとなった.今後は,本モデルをより詳細に解析し,椎間板変性モデルとしての有用性の検証を行う予定である.具体的には,①コンドリアーゼの至適投与量・濃度の検討,②コンドリアーゼ注入後の,椎間板の経時的変化の組織学的検討,③遺伝子発現解析,の3点である.ヒト椎間板変性においては,局所の炎症,活性酸素,また末梢神経・血管侵入が,その病態の進行,並びに疼痛に関与することが報告されている.このことから,組織学的解析においては血管内皮細胞のマーカーであるCD31,神経のマーカーであるNEF3,単球/マクロファージのマーカーであるCD68などを利用し免疫染色で椎間板変性の病態を評価するとともに,遺伝子発現に関しては炎症性サイトカイン,活性酸素種関連分子に重点をおき解析を行う.これらの情報を基に,コンドリアーゼを利用したラット椎間板変性モデルを確立し,併せて椎間板変性における酸化ストレス,血管・神経侵入の関与の解明を試みる.腫瘍実験に関しては,トラベクテジンがマウス骨肉腫細胞株に対し肺転移抑制能を有することを明らかとしており,またそのメカニズムの一部として,ERK経路の抑制を介した細胞遊走能の阻害であることを見出している.これらの知見を論文にまとめ,次年度中の英語論文掲載を目指す.エリブリンによる腫瘍血管誘導に関しては,重積血管新生の関与を示唆する所見が得られていることから,更なる検証を行うとともに,これまで明らかとなったエリブリンの滑膜肉腫に対する抗腫瘍効果と合わせ,論文化の予定である.
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Causes of Carryover |
COVID-19感染拡大の影響で学会、研究会がほぼ全てオンライン開催となったため、旅費の支出が皆無となった。令和3年度は積極的に研究成果を発信したい。もし、状況が改善しない場合、必要に応じて柔軟に実験動物、実験器具、試薬、コンピュータソフトなど消耗品の支出に振り分けたい
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Research Products
(36 results)