2022 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
19K09623
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Research Institution | Tottori University |
Principal Investigator |
石黒 尚子 鳥取大学, 医学部, 助教 (50346350)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 骨軟部肉腫 / 融合遺伝子 |
Outline of Annual Research Achievements |
胞巣状軟部肉腫では、特異的融合遺伝子としてASPL-TFE3が同定されている。本研究では、転写因子として働くASPL-TFE3の下流標的遺伝子群を網羅的に同定することで、本融合遺伝子が腫瘍発生に導く分子メカニズムを包括的に解明することを目指す。 前年度までに、ASPL-TFE3安定発現細胞株である293/TR-AT細胞を用いたクロマチン免疫沈降シークエンス(ChIP-Seq)解析により、ASPL-TFE3が結合するゲノム領域を網羅的に同定した。このChIP-Seq解析結果と既存のDNAマイクロアレイ解析ならびに抗体アレイのデータを組み合わせ、ASPL-TFE3により引き起こされる遺伝子発現変化の全体像を明らかにした。本年度はこの結果をもとに、腫瘍の発症・進展への関与が推察される下流遺伝子群の生物学的影響について検討した。まず、下流遺伝子群にシグナル伝達因子が多数含まれていたことから、発がんに関係するシグナル伝達経路の活性を検討したところ、ASPL-TFE3発現により幾つかの発がん関連シグナル経路の活性亢進が認められた。また、腫瘍細胞の動態に重要であると考えられる下流遺伝子群を抽出して、その影響を内因性ASPL-TFE3発現細胞であるFU-UR1細胞を用いて解析した結果、細胞増殖能および浸潤能を促進する下流遺伝子の存在を確認した。以上より、ASPL-TFE3の下流遺伝子群には、発がんシグナルを増強する因子や、腫瘍細胞の増殖・転移を促進する因子が含まれることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
ChIP-Seq解析の至適条件の設定に想定外の時間を要したこと、新型コロナ感染症対策に伴う学内設備の利用制限や感染拡大の影響(研究室スタッフ、家族の感染による療養・自宅待機や研究資材不足)により実験が度々中断されたことから、計画に遅れが生じた。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度までの解析により、ASPL-TFE3に関わる腫瘍特異的転写制御機構の概要や、下流遺伝子群が腫瘍動態及ぼす生物学的影響に関するデータを得ることができた。これらのデータを活用して、今後は以下の2点について研究を進める。 (1)ASPL-TFE3下流遺伝子に対象を絞り、FU-UR1細胞株に対する市販阻害剤の抗腫瘍効果を検討し、新規分子標的治療薬の候補を探索する。 (2)胞巣状軟部肉腫臨床検体におけるASPL-TFE3下流遺伝子の発現を解析し、悪性度、転移、予後などの臨床病理学的データとの相関を検討することで、バイオマーカー候補の探索を行う。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染症の影響に伴う研究の中断等により研究計画に遅れが生じたため、研究期間を延長した。これに伴い、助成金の次年度使用額が生じた。 助成金の使用計画としては、今後の研究に必要とされる消耗品の購入や研究成果の発表費用などに充てる予定である。
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