2019 Fiscal Year Research-status Report
局所の循環障害に着目した特発性大腿骨頭壊死症の病態解析
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19K09628
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
池村 聡 九州大学, 大学病院, 助教 (20781933)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 骨壊死 / 大腿骨頭 / 血流障害 / 虚血 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では「なぜ骨壊死が大腿骨頭に好発するのか」という問いに着目し検討を行っている。本年度は、大腿骨頭の中でもどの部位に骨壊死が好発しているのかという点に関して詳細に検討した。壊死と健常部の間に見られる硬化像を壊死範囲同定の基準とし、大腿骨頭壊死症患者で人工関節置換術が施行された際に摘出された35骨頭をμ-CTを用いて評価した結果、骨頭中央から前方にかけて広く壊死を認め、一方、骨頭中央から後方にかけての壊死領域は小さく、骨頭の中でも壊死発生に部位的相違があることが分かった。これまでも骨頭前方に壊死が好発することが示唆されていたが、実際に摘出骨頭を用いて定量的に評価した研究報告は少なく、次年度に予定している骨頭内の血流に関する免疫組織学的検討において、検討すべき領域に関して有用な情報を得ることができた。 大腿骨頭の血流評価という観点から造影MRIでの検討を行った。大腿骨頭壊死症では軟骨下骨折や骨頭圧潰により骨頭内に出血をきたし骨髄浮腫を呈する。骨髄浮腫が壊死分界部に及ぶと単純MRIでは正確な壊死範囲が同定困難となる。壊死境界が同定困難でガドリニウムを用いた造影MRIを施行した72症例の単純MRI T1像と造影T1像を比較検討した結果、約半数の症例で単純T1と造影T1で壊死境界の相違を認めた。造影MRIでは血流のない壊死部は造影されず、血流豊富な分界部(修復反応層)は顕著な造影効果を認めるため、大腿骨頭壊死症の血流分布を正確に評価できることが分かり、動物を用いた基礎的実験にも応用可能なことが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
次年度の免疫組織学的検討や基礎的実験(動物実験)を行う上で、大腿骨頭の中でもどの部位に着目すべきなのか、という点について有用な情報が得られた。
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Strategy for Future Research Activity |
①摘出骨頭を用いて行う血管収縮、攣縮関連の蛋白発現に関する免疫組織学的検討を部位別に比較検討する。また変形性股関節症の摘出骨頭と蛋白発現を比較検討する。 ②既にストックしてある大腿骨頭壊死症患者の関節液中血管収縮、攣縮関連の蛋白発現を変形性股関節症患者と比較検討する。 ③ステロイド(MPSL)、MPSL+リポポリサッカライド(LPS)を用いた家兎骨壊死モデルで大腿骨とその他の部位で血管収縮、攣縮関連の蛋白発現を比較検討し、骨壊死発生の部位的相違を明らかにする。
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Causes of Carryover |
本年度は、動物を用いた基礎的研究を行う前の予備的研究として、既に骨壊死の診断がついた症例の人工関節置換で摘出された骨頭を用いて骨頭内壊死発生の部位別相違を検討したため、動物購入や飼育料が不要であった。また、新型コロナウィルス感染拡大により出席予定であった3月の国際学会が中止になったため。
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Research Products
(4 results)