2020 Fiscal Year Research-status Report
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19K09660
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
今林 英明 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 共同研究員 (40296629)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
堀内 圭輔 防衛医科大学校(医学教育部医学科進学課程及び専門課程、動物実験施設、共同利用研究施設、病院並びに防衛, 整形外科学, 准教授 (30327564)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 思春期特発性側弯症 / LBX1 / マウスモデル / 後弯変形 / エネルギー代謝 |
Outline of Annual Research Achievements |
思春期特発性側弯症は就学期の青少年の約2-3%に発生する原因不明の疾患である.有効な予防法は限られており,また重症例に対しては手術が選択される.このことから,より有効な治療法・予防法の確立が強く望まれる.われわれは,これまでの網羅的ゲノム解析からLBX1遺伝子の近傍に局在する一塩基多型が思春期特発性側弯症の発症に関連することを見出している.本研究の目的は,Lbx1遺伝子改変マウスを作成し,成獣マウスの表現型解析から,Lbx1遺伝子の個体発生,ならびに生体における機能を明らかにすることで,思春期特発性側弯症の新規治療法開発に繋がる知見を得ることである.本研究ではLBX1が比較的高発現する筋組織特異的にLBX1を欠失した遺伝子改変マウスを作成し,その表現型解析を行った.これまでの解析から,前肢優位に四肢の低形成が生じ,その結果,二次的な肘関節・手関節の屈曲拘縮が認められることが明らかとなった.一方,少なくともヒトで見られるような冠状面での脊椎の変形は観察されなかったが,加齢に伴い遺伝子改変マウスは野生型に比較して後弯変形が亢進することが明らかとなった.また,興味深いことに,遺伝子改変マウスは野生型マウスに比較して肥満に対して抵抗性であり, 8週齢-50週齢にて,精巣上体周囲・腹腔内の脂肪組織が少なく,有意に体重が減少していた.以上から,筋肉内に発現するLBX1を欠失させることで,上肢の低形成,加齢とともに亢進する後弯変形が生じる事が明らかとなった.また筋肉内に発現するLBX1は,エネルギー代謝に機能していることが示唆された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでの研究から,筋組織特異的にLBX1を欠失した遺伝子改変マウスでは,ヒトの思春期特発性側弯症で認められるような脊椎変形は生じないものの,四肢では上肢優位の低形成の生じ,特に上肢では伸筋群の筋線維の低形成のため不可逆的な屈曲拘縮が生じること,さらに加齢ともに,後弯変形が抗することが明らかとなった.これらの形態異常は再現性が高く,Lbx1遺伝子の四肢筋組織発生・脊椎の形態維持における重要性を裏付ける結果となった.これまでの知見をまとめ,本年度中に論文発表の予定である.また,研究実績で記したように,研究の過程で,筋肉内に発現するLBX1がエネルギー代謝に関連することを示唆するデータが得られており,今後研究のさらなる発展が期待される.
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Strategy for Future Research Activity |
筋組織特異的にLBX1を欠失した遺伝子改変マウスでは,上記のように興味深い表現型が観察されたことから,まずはこれらの所見を纏め,論文化の予定である.また,エネルギー代謝におけるLBX1の機能に関しては,従来報告はなく,今後解析を深めいたいと考えている.特に,思春期特発性側弯症の患者は,正常な対象群と比較して,BMIが有意に低いことが知られており,遺伝子改変マウスで観察した所見が,何らかの形でヒトの病態を反映している可能性がると推測される.また,暫定的ではあるが,筋組織特異的にLBX1を欠失した遺伝子改変マウスは,野生型マウスに比較して,高脂肪食による肥満誘導に対しても抵抗性が高く,糖負荷試験においても血糖値の低下が短時間であることを観察している.これらの所見は,筋に発現するLBX1が代謝を亢進させることで,肥満に対して抵抗性になっていることを示唆しており,極めて新規性が高く,興味深いと考えられる.今後は,本遺伝子改変マウスを筋におけるエネルギー代謝の切り口から解析を行い,今後の研究開発のシードに発展させることを検討中である.
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Causes of Carryover |
コロナのため,一時的に研究室が閉鎖し,実験の一部が滞り残額が発生した.翌年度分として請求した助成金は実験試薬を中心に物品費に充てる予定である.
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Research Products
(1 results)