2019 Fiscal Year Research-status Report
Elucidation of pathogenesis of male infertility and search for new treatment focusing on anti-aging gene SIRT1
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19K09671
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Research Institution | Tottori University |
Principal Investigator |
中根 裕信 鳥取大学, 医学部, 准教授 (10304205)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小山 友香 鳥取大学, 医学部, 助教 (30827572)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | SIRT1 / Xpaマウス / 造精機能障害 / NAD+ |
Outline of Annual Research Achievements |
男性不妊の原因や病態は不明なものも多く、現代社会における少子化の点から新たな治療法が求められている。色素性乾皮症(XP)は、日光紫外線による高頻度の皮膚癌発生と精神神経症状、さらに精巣発育不全を臨床的特徴とし、DNA修復(ヌクレオチド除去修復)に異常をもつ遺伝疾患である。これまで我々は、A群色素性乾皮症遺伝子(Xpa遺伝子)を欠損したXpa遺伝子欠損マウス(Xpaマウス)の解析から、このマウスの精巣が、加齢とともに造精障害(精子形成過程の細胞の変性)となることを見出し、その変性がオートファジーの誘導によって引き起こされている可能性を見出している。最近、Xpa遺伝子に変異を持つA群色素性乾皮症の患者細胞において、NAD+の減少によって抗老化遺伝子サーチュイン1(Sirt1)の発現が低下し、オートファジーが亢進する新病態がわかった。本研究は、老化制御因子のニコチンアミドモノヌクレオチド等のNAD+の中間代謝産物(NAD+中間体)を補うことで、Sirt1の発現を正常レベルに維持するNAD+を増加させ、Xpaマウス精巣のオートファジー誘導及び精子形成過程の細胞の変性が抑制されるか否かを調べる。なお、本研究で用いるNAD+の中間代謝産物は、内在性生理物質で、生体内で常に使用されている代謝産物なので、次世代の遺伝情報への影響はなく安全と考えられる。ヒト男性不妊患者の精巣を解析した報告から、一部の男性不妊患者の精巣においてもXpa遺伝子の発現低下を示すケースが存在したので、我々はヒト男性不妊患者の精巣でXpaマウスと同様の病態が生じているとの仮説を持つに至った。このため本研究は、造精機能障害の新たな病態に基づく治療を行うことで、造精障害の治療法を開発することを目的とする。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究の目的を達成するために、Xpaマウスを用い、造精障害(精子形成過程の細胞の変性)およびオートファジー状態をモニターし、NAD+の中間代謝産物(NAD+中間体)の投与による効果を調べ、その分子メカニズムの解析を行う。昨年初めは、Xpaマウスコロニーの繁殖・生産がうまくいかず、実験に必要なマウス数を準備できなかったが、昨年末にようやく改善してきた。このため昨年は少数のマウスを用いて予備実験を行った。まず、NAD+中間体の投与方法の検討であるが、NAD+中間体を飲水に混ぜて投与する方法と腹腔内投与する方法とを検討したが、飲水による投与法では投与量の調整が難しく、腹腔内投与をすることにした。◆NAD+中間体の投与実験:各マウス雄に、生後8-12週令まで、NAD+中間体(500mg/kg/回, 1回/3日)を腹腔内投与し、組織学的に評価した(対照群は生理食塩水投与)。予備実験で少数のマウスを用いた実験からは、Xpaマウス精巣の空胞形成は抑制されないが、抗sirt1抗体による免疫染色では、対照群で生理食塩水投与のXpaマウス精巣のsirt1発現が減弱していたが、NAD+中間体の投与群のXpaマウス精巣ではsirt1の発現が維持されていた。マウス数を増やし、定量的にWB等でSirt1の発現、NAD+系・オートファジー・ミトコンドリア等の関連蛋白質を検索することで、NAD+中間体によるXpaマウス精巣への効果を確認する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
Xpaマウスを用い、精巣の造精障害(精子形成過程の細胞の変性)およびオートファジーの状態をモニターし、NAD+の中間代謝産物(NAD+中間体)の投与による効果を調べ、その分子メカニズムの解析を行うために、以下の実験を行う。昨年の予備実験の結果(上記)を、同様の方法でマウス数を増やし追試し確認する。さらに定量的にWBおよび網羅的解析(mRNA-seq遺伝子発現量解析)等でSirt1の発現、NAD+系、オートファジー・ミトコンドリア等の関連蛋白質を検索することで、NAD+中間体によるXpaマウス精巣への効果を確認する。NAD+中間体の投与群のXpaマウス精巣での効果を考えると、NAD+中間体の投与開始時期(生後8週令より早期)やNAD+中間体の投与する濃度による影響の検討も行う。今後のデータの解析を待つが、データによっては、投与するNAD+中間体の試薬の種類も検討する必要がある。また、Xpaマウス精巣における空胞の形成過程を詳細に解析するために、種々の固定法や実験条件によるXpaマウス精巣の評価も同時に行うつもりである。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由:Xpaマウスのコロニーの出生数減少によって実験に使用する十分な数のマウスが準備できず実験が遅れた。このため、予定していたNAD+中間体の試薬費用、網羅的解析(mRNA-seq遺伝子発現量解析)、飼育費等を支出しなかったことによる。 次年度使用額の使用計画:現在、実験に用いるXpaマウスを準備しており、NAD+中間体の試薬費用、網羅的解析(mRNA-seq遺伝子発現量解析)、Realtime-PCR等に使用する予定である。
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