2020 Fiscal Year Research-status Report
Elucidation of pathogenesis of male infertility and search for new treatment focusing on anti-aging gene SIRT1
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19K09671
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Research Institution | Tottori University |
Principal Investigator |
中根 裕信 鳥取大学, 医学部, 准教授 (10304205)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小山 友香 鳥取大学, 医学部, 助教 (30827572)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | SIRT1 / Xpaマウス / 造精機能障害 / NAD+ |
Outline of Annual Research Achievements |
男性不妊の原因や病態は不明なものも多く、現代社会における少子化の点から新たな治療法が求められている。色素性乾皮症(XP)は、日光紫外線による高頻度の皮膚癌発生と精神神経症状、さらに精巣発育不全を臨床的特徴とし、DNA修復(ヌクレオチド除去修復)に異常をもつ遺伝疾患である。これまで我々は、A群色素性乾皮症遺伝子(Xpa遺伝子)を欠損したXpa遺伝子欠損マウス(Xpaマウス)の解析から、このマウスの精巣が、加齢とともに造精障害(精子形成過程の細胞の変性)となることを見出し、その変性がオートファジーの誘導によって引き起こされている可能性を見出し、昨年論文発表した(Nakane et al, 2020)。最近、Xpa遺伝子に変異を持つA群色素性乾皮症の患者細胞において、NAD+の減少によって抗老化遺伝子サーチュイン1(Sirt1)の発現が低下し、オートファジーが亢進する新病態がわかった。本研究は、老化制御因子のニコチンアミドモノヌクレオチド等のNAD+の中間代謝産物(NAD+中間体)を補うことで、Sirt1の発現を正常レベルに維持するNAD+を増加させ、Xpaマウス精巣のオートファジー誘導及び精子形成過程の細胞の変性が抑制されるか否かを調べる。なお、本研究で用いるNAD+の中間代謝産物は、内在性生理物質で、生体内で常に使用されている代謝産物なので、次世代の遺伝情報への影響はなく安全と考えられ、事実、最近、人で安全なことが証明された。ヒト男性不妊患者の精巣を解析した報告から、一部の男性不妊患者の精巣においてもXpa遺伝子の発現低下を示すケースが存在したので、我々はヒト男性不妊患者の精巣でXpaマウスと同様の病態が生じているとの仮説を持つに至った。このため本研究は、造精機能障害の新たな病態に基づく治療を行うことで、造精障害の治療法を開発することを目的とする。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究の目的を達成するために、Xpaマウスを用い、造精障害(精子形成過程の細胞の変性)およびオートファジー状態をモニターし、NAD+の中間代謝産物(NAD+中間体)の投与による効果を調べ、その分子メカニズムの解析を行う。昨年の予備実験で、各マウス雄に、生後8-12週令まで、NAD+中間体(500mg/kg/日)を腹腔内投与し、組織学的に評価したが、Xpaマウス精巣の空胞の顕著な減少は見られなかった。本年度は、さらに投与の時期やNAD+中間体の投与量などで条件を検討したが、最適な条件を見出すことが困難であった。そこで、Xpaマウスとオートファゴゾームに特異的なLC3を過剰に発現するトランスジェニックマウス掛け合わせたオートファジー・モニターマウス(Xpa-LC3)で、予備実験として条件検討したところ生後約3週令マウスで、空胞化を指標とした解析が可能なことを見出し、現在解析中である。マウス数を増やし、定量的にWB等でSirt1の発現、NAD+系・オートファジー・ミトコンドリア等の関連蛋白質を検索することで、NAD+中間体によるXpa(Xpa-LC3)マウス精巣への効果を確認する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
Xpa(Xpa-LC3)マウスを用い、精巣の造精障害(精子形成過程の細胞の変性)およびオートファジーの状態をモニターし、NAD+の中間代謝産物(NAD+中間体)の投与による効果を調べ、その分子メカニズムの解析を行うために、以下の実験を行う。本年の予備実験の結果(上記)を、同様の方法でマウス数を増やし追試し確認する。さらに定量的にWBおよび網羅的解析(mRNA-seq遺伝子発現量解析)等でSirt1の発現、NAD+系、オートファジー・ミトコンドリア等の関連蛋白質を検索することで、NAD+中間体によるXpa(Xpa-LC3)マウス精巣への効果を確認する。今後のデータの解析を待つが、データによっては、投与するNAD+中間体の試薬の種類も検討する必要がある。また、Xpaマウス精巣における空胞の形成過程を詳細に解析するために、種々の固定法や実験条件によるXpaマウス精巣の評価も同時に行うつもりである。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由:Xpaマウスの実験の最適条件の探索を行ったが難しく、実験が遅れた。このため、予定していた網羅的解析(mRNA-seq遺伝子発現量解析)、飼育費等を支出しなかったことによる。 次年度使用額の使用計画:現在、実験に用いるXpa(Xpa-LC3)マウスを準備しており、NAD+中間体の試薬費用、網羅的解析(mRNA-seq遺伝子発現量解析)、Realtime-PCR等に使用する予定である。
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