2020 Fiscal Year Research-status Report
膀胱癌に対する革新的アブレーション技術の確立と応用展開
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19K09690
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
枝村 康平 岡山大学, 大学病院, 助教 (90535816)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
定平 卓也 岡山大学, 大学病院, 助教 (20733322)
那須 保友 岡山大学, 医歯薬学総合研究科, 教授 (20237572)
和田 耕一郎 岡山大学, 大学病院, 講師 (20423337)
荒木 元朗 岡山大学, 大学病院, 講師 (90467746)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 膀胱癌 / 局所治療 / 薬剤投与法 |
Outline of Annual Research Achievements |
表在性膀胱癌の治療では経尿道的膀胱腫瘍切除術(TUR-Bt)が第一選択とされる一方、筋層浸潤性膀胱癌については未だ根治性を期待できる内視鏡治療は存在せず、最終的に膀胱全摘除術を余儀なくされる症例も少なくない。申請者らは近年、組織内圧を可及的に一定に保ちつつ、治療薬を均一に注入できる独自の薬剤投与技術を開発した。膀胱癌の内視鏡下治療の際に、いかに低侵襲の根治的治療法を患者に提供するか、という方向性を念頭に、令和2年度にイヌ膀胱における内視鏡下局所治療に係る研究を実施した。まず、表在性膀胱癌に対する薬剤の局所投与治療法に根治性を持たせるために、膀胱鏡下にどのように薬剤を当該病変部位に投与するか、という課題についての研究を実施した。また、「表在性・浸潤性膀胱癌のいずれにも対応可能な、安全かつ根治的な腫瘍アブレーション効果を有する、内視鏡下最低侵襲治療」の開発という泌尿器科分野において極めて重要な課題に挑戦するべく、表在癌と浸潤癌の場合とに分けて、研究方法・戦略を設定した。更に、既存の文献に基づき、数種類の組織アブレーション作用を有する投与試験薬について、それぞれの膀胱粘膜におけるアブレーション効果を検証した。本研究では「膀胱癌の内視鏡治療において、アブレーション薬剤を癌病巣局所とその周辺に独自の方法により局所投与することにより表在癌と浸潤癌を根治治療することが可能なのか?」といった学術的「問い」を設定しており、これを研究・解明することで、膀胱癌の内視鏡治療における革新的医療技術の確立へと繋げる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
標的とする組織部位における薬剤の局所投与・アブレーション療法について、特に従来法で指摘されている「組織内に薬液を注入する際の局所圧の上昇により、薬液が不均一に拡散する、また標的部位以外への漏れが発生する」といった課題に対する解決を図るべく、独自の薬剤投与法を用いてイヌ膀胱における動物実験を実施した。我々の開発した、組織内圧を可及的に一定に保ちつつ、治療薬をより均一に局所注入できる薬剤投与法についての検証も行い、有望な成果を得た。その中で、「当該投与法に基づく薬剤の注入投与とその成果である薬剤の浸透・拡散の程度は、球状の癌・腫瘍でよりも、膀胱のような二次元構造(より薄っぺらい形状)の組織の癌・腫瘍でより制御しやすい」、という我々の従来の仮説をほぼ立証することができた。本研究は順調に進捗している。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は令和元年度に引き続き、アブレーション効果を有する様々な薬剤、またその溶媒およびそれらの適切な組み合わせについて、それぞれの膀胱粘膜における内視鏡下でのアブレーション作用について検証した。今後も引き続き、内視鏡下薬剤局所投与による膀胱癌の根治的治療法の確立と当該局所治療候補薬の最適化に係る研究を推進する。本研究の成果は、膀胱癌治療の分野にパラダイムシフトを起こすインパクトを明確に内在しており、更には、消化管等の管腔臓器癌に対する内視鏡治療学の幅広い分野において波及効果をおよぼす研究でもある。イヌを用いた動物実験において、胃等の消化管における病変部の治療についても当該薬剤投与・アブレーション技術が有効であるかについて予備的検討を実施する。
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Causes of Carryover |
令和2年度の研究においては、イヌ膀胱粘膜表面における局所投与治療の効果の最適化を念頭に、当該粘膜表面への薬剤局所投与法に係る研究を優先して遂行した。今回、浸潤性膀胱癌に対する治療を念頭においた粘膜下への薬剤局所注射に基づく投与手法の解析について、予定と比べて未使用額が生じたものである。しかしながら令和2年度の成果により、粘膜下への薬剤の注射投与については、大きな合併症を引き起こすリスクがあることが判明した。したがって今年度未使用額を令和3年度分にあてがい、膀胱における内視鏡下薬剤投与システムの改良・最適化に使用し、引き続き研究目的の達成に向け執行する計画である。
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