2021 Fiscal Year Research-status Report
腎細胞がんにおける炎症と免疫の関連メカニズムの解明とその新規免疫療法への応用
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19K09726
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Research Institution | Dokkyo Medical University |
Principal Investigator |
齋藤 一隆 獨協医科大学, 医学部, 教授 (10422495)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中山 貴之 埼玉医科大学, 医学部, 助教 (10727225)
北野 滋久 公益財団法人がん研究会, 有明病院 がん免疫治療開発部, 部長 (60402682)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 腎細胞がん / 炎症 / 免疫 / C反応性蛋白 / 免疫チェックポイント阻害剤 |
Outline of Annual Research Achievements |
腎細胞がんに対する免疫治療の発展を目的として、炎症と抗腫瘍免疫の関連メカニズムを解明するため、以下の研究を行った。 1)炎症マーカーの腎細胞がんにおけるバイオマーカーとしての意義の解明 昨年度までに、免疫チェックポイント阻害剤療法において、炎症マーカーであるC反応性蛋白(CRP)の推移は治療効果と密接に関連し、炎症マーカーは免疫療法における免疫バイオマーカーとなることを報告した。本年度は、国際、国内共同研究によりそれぞれ大規模データベースを構築し、CRPが腎細胞がんの重要な予後因子となることを明らかとした。米国との国際共同研究にて、CRPの上昇は、高血圧の併存、body mass indexが高いこと、腫瘍が大きいことと相関し、術前に血清CRP値が上昇している例は、全生存および非再発生存が有意に不良であることを報告した。これまでCRPと予後の関連については、主に淡明型腎細胞がんで検討されてきたが、乳頭状腎細胞がんにおいてもCRPが重要な予後因子となり、CRP上昇例の予後が不良であることを確認した。国内共同研究で、手術療法を施行した腎細胞がんにおいて、術前CRPが予後と相関し、CRPのカットオフ値がこれまでに報告されているものより低値となり得る可能性を見出した。 2)炎症による免疫抑制誘導モデルの作成と機構を解明するため、腫瘍微小環境で、炎症により抗腫瘍免疫抑制が誘導されるモデルとなる、ヒト腎細胞がん細胞と免疫担当細胞の培養実験を開始した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究計画のなかで主目標の1つとしている免疫療法における炎症マーカーの免疫バイオマーカーとしての有用性の検証については、免疫チェックポイント阻害剤に治療された腎細胞がんで、炎症マーカーCRPが有用な免疫バイオマーカーとなることを国際学術誌へ報告している。本年度は、さらに国際、国内共同研究による大規模データベースの検討で、炎症マーカーが腎細胞がんの予後と関連することを検証した。 炎症による抗腫瘍免疫抑制の機序の解明については、培養モデルの作成に着手したところであり、今後研究を進めていく。
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Strategy for Future Research Activity |
研究計画に従い、引き続き、腎細胞がんにおける、炎症が免疫抑制を誘導する機序など、炎症と免疫の関連メカニズムを解明することを目的に研究を進める。 ヒト腎細胞がん細胞と免疫担当細胞の培養モデルを作成し、腫瘍微小環境での免疫抑制誘導機序の解明を進める。 腎原発巣および、摘出転移巣の腫瘍組織の免疫状態を評価し、宿主の炎症反応状態との関連を明らかとする。また免疫療法の予後の情報と合わせ、炎症マーカーを用いた免疫指標スコアモデルを構築する。
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Causes of Carryover |
当該年度では、腎細胞がんの免疫状態と全身炎症反応との関連解析、および、炎症による免疫抑制を誘導する機序の解明において、実験機材、試薬の購入で支出額が所要額に達せず、次年度使用額が生じた。 次年度で、上記の研究テーマの実験において必要な関連試薬の購入に助成金を使用することを計画している。
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