2022 Fiscal Year Research-status Report
腎細胞がんにおける炎症と免疫の関連メカニズムの解明とその新規免疫療法への応用
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19K09726
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Research Institution | Dokkyo Medical University |
Principal Investigator |
齋藤 一隆 獨協医科大学, 医学部, 教授 (10422495)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中山 貴之 埼玉医科大学, 医学部, 助教 (10727225)
北野 滋久 公益財団法人がん研究会, 有明病院 がん免疫治療開発部, 部長 (60402682)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 腎細胞がん / 炎症 / 免疫 / C反応性蛋白 |
Outline of Annual Research Achievements |
腎細胞がんに対する免疫治療の発展を目的として、炎症と抗腫瘍免疫の関連メカニズムを解明するため、以下の研究を行った。 1)炎症マーカーの腎細胞がんにおけるバイオマーカーとしての意義の解明 米国との国際共同研究にて、乳頭状腎細胞がんにおいても代表的な炎症マーカーであるC反応性蛋白 (CRP)が重要な予後因子となり、CRP上昇例の予後が不良であることを報告した。この結果より、炎症マーカーCRPは、淡明型腎細胞がんに加えて、乳頭状腎細胞がんサブタイプにおいても、予後を反映することを確認した。 2)腫瘍微小環境での、炎症により抗腫瘍免疫抑制が誘導されるモデルの作成 ヒトマクロファージ様細胞株 (U937)で、ホルボール12‐ミリスタート13‐アセタート (PMA)で刺激し、M1マクロファージへの分化を誘導した。形態的に細胞の複雑性の上昇を認め、フローサイトメトリーでも前方錯乱光 (FSC)、側方錯乱光 (SSC)の増大を確認し、M1への分化を確認した。また、M1へ分化誘導した細胞をヒト淡明型腎細胞がん由来細胞株(Caki-1)培養上清で刺激し、M2マクロファージへの分化誘導を試みた。Caki-1培養上清刺激により、さらなる細胞の複雑性とともに、SSC、FSCの増大を認め、M2マクロファージへ分化誘導されている傾向が確認された。この結果は、腎細胞がん微小環境でがん細胞からの刺激により抗腫瘍免疫が抑制されるモデルになり得ると考えられる。今後は表面マーカーや産生サイトカインなどを解析し、共培養モデルも用いて研究を進める。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究計画のなかで主目標の1つとしている免疫療法における炎症マーカーの免疫バイオマーカーとしての有用性の検証については、炎症マーカーCRPが有用な免疫バイオマーカーとなることを国際学術誌へ報告したことに加え、本年度は、さらに国際共同研究により、炎症マーカーが腎細胞がんの予後と関連することを報告した。 炎症による抗腫瘍免疫抑制の機序の解明については、培養モデルの作成を行い、腎細胞がん細胞株の培養上清の刺激により、抗腫瘍免疫抑制へ誘導される傾向が確認されたが、さらに詳細な解析が必要である。
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Strategy for Future Research Activity |
研究計画に従い、引き続き、腎細胞がんにおける、炎症が免疫抑制を誘導する機序など、炎症と免疫の関連メカニズムを解明することを目的に研究を進める。作成中のヒト腎細胞がん細胞と免疫担当細胞の培養モデルを用いて、免疫担当細胞のサイトカイン産生など機能解析を行い、さらに共培養モデルで相互刺激作用を確認する。
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Causes of Carryover |
当該年度では、実験機材、試薬の購入で支出額が所要額に達せず、次年度使用額が生じた。 次年度で、研究テーマの実験において必要な実験器具、関連試薬の購入に助成金を使用することを計画している。
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