2019 Fiscal Year Research-status Report
去勢抵抗性前立腺がんのアンドロゲン受容体転写協調因子を標的としたポリアミド創薬
Project/Area Number |
19K09740
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
高橋 悟 日本大学, 医学部, 教授 (50197141)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大日方 大亮 日本大学, 医学部, 助教 (20624886)
井上 聡 地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター(東京都健康長寿医療センター研究所), 東京都健康長寿医療センター研究所, 研究部長 (40251251)
藤原 恭子 日本大学, 歯学部, 准教授 (40595708)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | ピロール・イミダゾールポリアミド(PIP) / 前立腺癌 |
Outline of Annual Research Achievements |
前立腺がんの増殖・進展は主にアンドロゲン受容体(AR)により制御されており、去勢は有効な治療法であるが、多くが経過中に去勢抵抗性前立腺がん(CRPC)に変化する。CRPCでは低アンドロゲン環境下でもARやアンドロゲン代謝経路を変異・活性化させることで、ARシグナル経路を介した増殖が維持されることが、これまでの研究で明らかにされている。これに対して、より強力にアンドロゲンやARを抑制する新規治療薬が登場したが、奏功期間が数か月と短いことなどの課題が多い。ARに関連する転写協調因子等の変異により、ARシグナル経路の異常活性化が起こることがその原因の一つと考えられている。我々は中分子化合物であるピロール・イミダゾールポリアミド(PIP)を用いて、この治療抵抗性のメカニズムを標的とした画期的な抗CRPC化合物の開発を行い、国内外にて2件の特許を取得している。本研究ではこれらのPIPを用いた前立腺がん治療薬開発と臨床応用に向けた検討を行う。従来の内分泌療法薬が、アンドロゲン合成あるいはARを対象としていたのに対し、本化合物はホルモン受容体協調因子を標的とする点に革新性を有する。すなわち、その作用機序より変異ARを有するCRPCに対しても奏功する可能性があり、実際に治療抵抗性前立腺がん動物モデルでの実験で治療効果が実証されている。これに対し、今年度はPIP数種類に化学修飾を施し、DNAへの結合能や殺細胞効果を増強させた改良PIPを複数合成し、複数の前立腺がん細胞株と対象コントロールとして非がん細胞株を用いた増殖アッセイを行った。結果として2種類の有望な候補化合物を同定することができ、現在、前立腺癌細胞株を用いたマイクロアレイを検討中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度はピロールイミダゾール数種類に化学修飾を施すことにより、殺細胞効果を増強させた新規薬剤を複数合成し、癌細胞特異的な増殖抑制能を研究することを目標とした。そのため、改良PIPを複数合成し、複数の前立腺がん細胞株と対象コントロールとして非がん細胞株を用いた増殖アッセイを計画した。この計画に従って各細胞ごとの候補薬剤に対するIC50を比較検討することにより、癌特異性の高い有望な候補化合物を2種類同定することができたため、当初の計画通りおおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
得られた候補化合物を投与した複数の前立腺癌細胞株からRNAを抽出し、マイクロアレイ解析を行う。コントロール群と比較して、有意な発現変化のある遺伝子群を抽出し、その遺伝子群が関与していると予想される遺伝子経路を同定する。興味深い遺伝子経路があれば、その経路を構成する遺伝子の機能解析を当初の研究計画に加え、候補化合物の作用メカニズムのさらなる解明に努める。
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Causes of Carryover |
一部消耗品薬剤の購入費用が予想より低く抑えることができた。本年度繰り越した金額はそのままRNA抽出キットや、抗体の購入並びに細胞培養に関連する消耗品費用にあてることにより、より令和2年度の研究が効率的に進められる。
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