2021 Fiscal Year Annual Research Report
PCOSの治療・予防を目的とした腸内細菌叢解析と新規治療戦略の開発
Project/Area Number |
19K09749
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
原田 美由紀 東京大学, 医学部附属病院, 准教授 (70451812)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 腸内細菌叢 / 多嚢胞性卵巣症候群 / 胎内環境 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、腸内細菌叢に着目して多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)発症機序を明らかにし、これをターゲットとしたPCOSに対する治療戦略を開発することを目的とする。 PCOS女性に対しては、不妊治療成績ならびに周産期予後の向上のために、挙児努力前からの健康管理、プレコンセプションケアが勧められる。しかしPCOSの発症機序が明らかでないため、生活指導や対症療法以外の有効な方策が打ち出せていない。本研究では、胎児期の高アンドロゲン曝露によって成長過程の腸内細菌叢形成に異常が生じ、その結果、代謝・ホルモン環境などの複合的な異常から成る病態であるPCOSが発症するという仮説を立てた。 胎児期に高アンドロゲン状態に曝露されたマウス(PNAマウス)を用いて出生後の成長過程(離乳期から性成熟期)においてPCOSを発症する時期、腸内細菌叢の変遷を詳細に検討した。表現型の検討で、PNAマウスでは思春期にあたる生後6週から生殖機能異常(性周期異常、多嚢胞卵巣、血清テストステロン値上昇)が、若年成人期にあたる生後12週から代謝異常(体重増加、インスリン抵抗性)が明らかとなった。腸内細菌叢解析では、腸内細菌叢の豊富さを示す指標がPNAマウスでは8週(青年期)では高く、12週、16週では低下していた。またPNAマウスとコントロールマウスでは6週、8週で細菌叢が集団として異なっていた。さらに興味深いことに、PNAマウスの腸内細菌叢の構成は、離乳期にあたる4週ですでにコントロール群とは異なっていた(Kusamoto, Harada et al. FASEB J 2021)。 この、成長過程において腸内細菌叢異常がPCOS病態の顕在化に先立って出現するという結果は、腸内細菌叢がPCOS発症予防のターゲットとなり得ることを示唆するものであり、現在成長過程の腸内細菌叢の介入による、PCOS予防法を探索している。
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