2019 Fiscal Year Research-status Report
原発性卵巣不全患者における減数分裂関連因子異常の探索
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19K09755
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
伊藤 史子 熊本大学, 病院, 非常勤診療医師 (90648271)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
石黒 啓一郎 熊本大学, 発生医学研究所, 准教授 (30508114)
大場 隆 熊本大学, 大学院生命科学研究部(医), 准教授 (50244132)
片渕 秀隆 熊本大学, 大学院生命科学研究部(医), 教授 (90224451)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 卵巣 / 卵巣不全 / 遺伝子 |
Outline of Annual Research Achievements |
1、原発性卵巣不全(POI)の本態は卵巣における卵子の枯渇であり、POI以外の表現型に異常を認めない症例の原因の一つに減数分裂特異的な遺伝子の変異が想定されてきた。最近、減数分裂を制御するSTRA8遺伝子やSTRA8と協調して働くStIP1遺伝子異常により生殖細胞が減少することが判明したことから、ヒトPOI患者におけるこれらの遺伝子変異の可能性について検討することを目的とし、同意が得られたヒトPOI7例の末梢血液検体を採取した。検体からDNAを抽出し、STRA8ならびにStIP1のヒトホモログを対象として、ターゲットシーケンスを行った。ターゲットシーケンスの範囲はSTRA8ならびにStIP1ヒトホモログをコードするゲノム遺伝子の該当エキソンと周辺イントロンのDNA配列情報に限定し、これらのターゲット領域をPCR法により増幅し配列決定を行った。さらに、次世代シークエンス法を用いてSTRA8/StIP1の制御下にあると推定される約300の遺伝子に限ったエクソーム解析を行った。ヒトゲノム配列データベースと比較した結果、複数の症例でSNPとして報告されていないアミノ酸置換を伴う新規変異が複数認められた。
2、STRA8の会合因子であるStIP2の減数分裂における役割の解析を目的とし、Crispr-Cas9を用いてStIP2機能欠損マウスを作成した。StIP2機能欠損マウスの減数分裂について、精巣ならびに卵巣を採取し組織学的ならびに免疫組織学的解析を行ったところ、雌雄いずれにおいても明らかな減数分裂異常はみられなかった。また雌雄ともに野生型と比較して妊孕性の低下は認められなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1、これまでに集積し得た7例の解析は概ね終了し、複数の症例でSNPとして報告されていないアミノ酸置換を伴う新規変異を複数個同定した。 2、StIP2の解析は概ね終了した。StIP2単独の欠損は雌雄ともに減数分裂に影響を及ぼさず、期待通りの結果は得られなかった。一方で、その間に並行して行われた他の実験結果から、STRA8/StIP1制御下因子には減数分裂関連因子が複数存在することが示されたことから、①の計画はこのまま継続する。
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Strategy for Future Research Activity |
1、他施設との共同研究によりさらなる症例の収集を継続する。同定されたアミノ酸置換を伴う新規変異について、その変異がタンパク質の構造や機能に及ぼす影響について考察する。減数分裂への関与が予想される遺伝子変異が同定された場合には、同等の変異をマウスに導入した遺伝子改変マウスの表現型を解析する。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染症の世界的蔓延による国際郵便等の遅延により、購入希望の試薬の入荷の見通しが立たなかったため
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