2019 Fiscal Year Research-status Report
周産期脳障害に対するマグネシウムのプレコンディショニング効果に関する基礎的研究
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19K09756
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Research Institution | University of Miyazaki |
Principal Investigator |
鮫島 浩 宮崎大学, 医学部, 教授 (50274775)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | マグネシウム / 周産期脳障害 / 耐性 / preconditioning / 低酸素虚血 |
Outline of Annual Research Achievements |
臨床データから、妊娠中のMg投与は出生時の脳障害の発症を減少させることが示された。この背景にpreconditioning効果があると考え、その効果を示すMgの投与量、投与時期、また成熟児と未熟児でpreconditioning獲得の能力に差があるのか、動物実験を実施した。 周産期脳障害モデルである新生仔ラットを用いMgのpreconditioning作用の有無を検討した。ます、成熟児に相当する7生日ラットを研究に用いた。投与時期に関しては、低酸素虚血を負荷する48h前、24h前、直前の3群に分けた。投与量に関しては、dose-responseの有無を検討した (下表)。 投与量に関しては、全ての投与量において、dose-response曲線はU字型の曲線を示した。low-dose (<20mg/body weight g)とhigh-dose (>80mg/g)ではMgのpreconditioning効果が得られず、ほぼ全例に脳障害を発症した(下表)。最大効果は 40~60mg/gの中等量で認められた。また、投与時間に関しては、低酸素負荷直前ではpreconditioning効果はほとんど無く、24h前~48h前で有効性も認め、特に24h前で最大抑制効果を認めた。 下表:Mg投与量を低用量<20mg/g、低用量20~40mg/g、中等量40~60mg/g、高用量>80mgとし、それぞれ、48h前投与、24h前投与、直前投与の順で脳障害発症頻度を示す。低用量<20mg/gでは、時間順に(100%、100%、67%)であった。次に、低用量でも20~40mg/gを使用した群では、順に(67%、83%、67%)、中等量40~60mg/gでは、順に(33%、0%、67%)、高用量>80mgでは、順に(100%、100%、100%)であった。 同様の実験を未熟児モデル(5生日ラット)で検討し始めた。パイロット研究の段階であるが、程度の差はあるもののMgのpreconditioning効果が未熟児の脳でも認められる。このように、Mgのpreconditioning効果が、低酸素虚血負荷前の24hを最高にして、負荷前48hでも認められ、またその効果を発現する至適投与量も決定することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
成熟児モデルでMgのpreconditioningを確認することができた。また、未熟児モデルでもその傾向を認めた。今後、検討実験数を増やすことでthrepeutic windowの確定、dose-responseの確定などを検討する予定である。このように、全体として当初の計画以上の成果が認められると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
成熟児モデルでは、Mgのpreconditioning効果が48時間より以前でも認められるか、の検討を追加する。未熟児モデルでもパイロット研究で有効性が認められたため、成熟児モデルと同様のプロトコールで実験数を増加させる。これらによって、臨床での治療プロトコール作成につなげるための検討、具体的には、予防的Mg投与の投与時期とその投与量を決定する。そのために、今後もこれまでと同様の実験プロトコールで、実験数を増やし、統計学的検討が可能な十分数のデータを蓄積する。 今後、妊娠中の予防的治療であるMgと、受傷後の標準治療である低体温療法との相乗効果に関しても、新たな研究を開始するためのパイロット研究を行う。また、Preconditioning作用にはミトコンドリアなどのいくつかの機序が報告されている。Mgの作用に関しても、基礎的研究者と協同し、preconditioningの作用機序の解析を推進する。
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Causes of Carryover |
今回、3月初頭のカナダで開催予定のSociety for Reproductive Sciences (active member)がCOVID-19のため、学会自体がキャンセルされた。同様に、年度末の国内の研究会もキャンセルされた。これに伴う旅費を来年度に繰り越したい。また、実験に供した動物モデルの成功率が高く、かつ、実験中の低酸素虚血に伴う死亡率も想定よりかなり低かった。このようなことから予想以上に実験計画を遂行することができたが、一方で、動物に用いる物品費や消耗品費が少なくて済んだ。また、論文作成には至らなかったため、英文校正などの経費が少なくて済んだ。 次年度の動物モデルの成功率はこれまでのように低く想定する必要があり、また、いくつかのパイロット研究も行うため、実験数を増やす計画する。2020年度末の国際学会、国内学会はCOVID-19もある程度収束すると希望的に考え、人数を増やして参加予定である。また、いくつかの論文を計画中であり、その英文校正、場合によっては論文の掲載費用として用いる計画である。
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