2020 Fiscal Year Research-status Report
周産期脳障害に対するマグネシウムのプレコンディショニング効果に関する基礎的研究
Project/Area Number |
19K09756
|
Research Institution | University of Miyazaki |
Principal Investigator |
鮫島 浩 宮崎大学, 医学部, 教授 (50274775)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | 低酸素虚血 / 周産期脳障害 / マグネシウム / 動物実験 / preconditioning |
Outline of Annual Research Achievements |
低酸素虚血(HI)開始前にmagnesium(Mg)を投与し、Mgのpreconditioning効果を引き続き検討した。 通常、夏実験モデルは実験ストレスに耐性があり、一方、冬実験モデルは耐性が弱い。しかし今年度は季節を問わずHI負荷によって脳障害が多発し、逆にHI負荷を軽減すると脳障害が殆ど発症せず、Mg効果を検討する実験条件を満たすことが困難であった。そこで、一般にHI負荷に強いと考えられている未熟児モデルを作成して実験を行った。通常、ヒト胎児で成熟児脳に相当する7生日Wistarラットを用いるが、今回は5 生日ラットを用いた。ヒト胎児の在胎30週前後に相当する。24時間前(4生日ラット)に、生食、中濃度Mg(25~50mg/kg)、高濃度Mg(~100mg/kg)を投与し、5生日にLevine-Riceモデルを作成し、十分な回復を待って8%低酸素負荷を120分間負荷した。実験終了7日後(14生日)に脳組織を摘出し、脳障害の程度を判定した。 結果:生食では70% (7/10)に中等度以上の脳障害(途中の死亡を含む)を発症した。一方、中濃度Mgでは脳障害発症頻度は61.5% (8/13)、高濃度Mgでは脳障害発症頻度は55.5% (5/9)であり、容量依存的に脳障害発症を軽減した。 考察:昨年度は、成熟児に相当する脳発達段階を持つ7生日Wistarラットで実験し、24時間前のMg投与でpreconditioning効果を認め、脳障害を有意に減少させた。今年度は、実験状況が不良で、途中から5 生日Wistarラットの実験に変更した。在胎30週前後の未熟脳に相当する本実験モデルでも、24時間前のMg投与でpreconditioning効果を認めた。従って未熟脳に対しても成熟脳に対しても、Mgは脳保護作用を持ち、HIの24時間前の投与によってHIへのpreconditioning効果を持つと考えられる。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
成熟児モデルを用いてMgのpreconditioning実験を行う予定であったが、今期は動物実験のデータが安定せず、脳障害の発症頻度が一腹(通常12~15新生仔)毎に大きく異なった。そこで成熟児モデルを用いた実験を中断し、未熟児モデルを作成することとし実験を追加した。本来計画の成熟児実験(容量依存性、時期依存性)は出来なかったが、一方で未熟児実験でそれを補完する実験ができた(実験数が統計学的検討に少し不足)ため、概ね順調であると判断した。
|
Strategy for Future Research Activity |
今年度、Mgの容量依存性、時期依存性を成熟児モデルと未熟児モデルで検討し、Mgの周産期脳障害軽減効果、特にpreconditioning効果の全貌に近づくよう、実験を追加する予定である。実験自体の推進に技術的問題はなく、実験ストレスに強いと考えられている夏実験期間中に実験を終了できるよう、計画を進めていく。
|
Causes of Carryover |
今年度は動物実験の条件が悪くモデル作製率(成功率)が極端に低かったため、実験を制限せざるを得なかった。 次年度は、この点を考慮し、多くの実験を行う予定である。また、今年度出席不可であった学会出張や論文作成等で実験内容について討論を深める予定である。
|