2019 Fiscal Year Research-status Report
卵巣明細胞癌におけるヒストン修飾とmiRNA間のエピゲノムネットワークの解明
Project/Area Number |
19K09775
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
鶴賀 哲史 東京大学, 医学部附属病院, 助教 (70570448)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | エピゲノム / DNAメチル化 / ヒストン修飾 / miRNA / 卵巣明細胞癌 / WHSC1 / SMYD2 / ChIP-seq |
Outline of Annual Research Achievements |
エピゲノム因子の中でDNAメチル化は広く研究されているが、婦人科癌においてヒストン修飾、miRNAの研究は遅れている。今回、治療抵抗性であり、本邦において頻度が高い卵巣明細胞癌におけるヒストン修飾とmiRNAのエピゲノムネットワークについて解明する。ヒストン修飾酵素、miRNAはそれぞれ単独でも多層的な遺伝子調整をしており、両者のネットワークとなると、より複雑性が増すことから人工知能による深層学習を利用してマルチオミックス解析を行う。最終的には深層学習を利用して、新規治療標的予測因子―エピゲノムバイオマーカー、新しいエピゲノム治療薬の開発を目指す。本年度はまずヒストン修飾における解析を行った。まず卵巣明細胞癌における治療標的となりうるヒストンメチル化酵素の同定を行った。リアルタイムPCR法にて10種類のヒストンメチル化酵素の中で2種類のヒストンメチル化酵素(WHSC1、SMYD2)の発現上昇が認められた。その中で、ヒストンメチル化酵素SMYD2に着目し、卵巣明細胞癌においてsiRNAによりSMYD2をノックダウンするとヒストンメチル化の減少とともに細胞増殖抑制が認められた。またSMYD2ノックダウンにおいてアポトーシス誘導が認められ、SMYD2が卵巣明細胞癌の治療標的である事がわかった。次に我々は共同研究により臨床検体に対応したChIP-seq法の標準化へ向けて新しいプロトコールを開発した。ChIP-seq法の問題点として、検体数が増えると、実験手順が煩雑であるため、実験手技の個人差が出やすいということが挙げられる。我々は、その問題点の解決のため、汎用ヒト型ロボットまほろを使用したChIP-seq法を行った。まほろは人間を模倣した実験手技が可能で、高い再現性・正確性を有す。卵巣明細胞癌臨床検体においてMYC-PVT1領域に転写活性を司るヒストン修飾のシグナルが認められた。この結果により臨床検体を用いたまほろによるChIP-seq法に成功したと言える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上記の研究実績の概要に記載した通りおおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度の研究成果を踏まえて以下の研究を行う予定である。 Ⅰ.OCCCにおける治療標的、バイオマーカーになりうるmiRNAとヒストン修飾・脱修飾酵素の同定 リアルタイムPCR法を用いてOCCC細胞株(10種類)、臨床検体(200例)の発現解析を行い、発現が亢進しているあるいは低下しているmiRNA(30種類)。同定された遺伝子をCRISPR-Cas9法を用いてノックアウトまたは遺伝子導入法を用いて強制発現を行った後、細胞増殖試験を行い、細胞増殖抑制を確認する事により治療標的遺伝子、バイオマーカーを絞り込む。 Ⅱ.OCCCにおけるmiRNAとヒストン修飾・脱修飾酵素のネットワークの検討 Ⅰで得られたmiRNAをCRISPR-Cas9法でノックアウトしたOCCC細胞株または遺伝子導入法により強制発現させたOCCC細胞株に対して優位に変動するヒストン修飾・脱修飾酵素の発現をリアルタイムPCR法にて同定する。次に同細胞株を用いて、ChIP-seq法にて変動するヒストン修飾の網羅的解析を行う。さらにRNA-seq法を加えることにより、miRNAがヒストン修飾を介して調節している下流遺伝子群を解析する。Ⅰで得られたヒストン修飾・脱修飾酵素を同様にノックアウト、強制発現を行った細胞株に対してリアルタイムPCRにて優位に変動するmiRNAを同定する。miRNA-seq法を行い変動するmiRNAの網羅的解析を行う。臨床検体においてChIP-seq法とmiRNA-seq法を行い、細胞株で認められたヒストン修飾とmiRNAの関係性が臨床検体においても認められるかを検討する。
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Causes of Carryover |
予定していた学会が延期となったこと、研究室内の既存の試薬を使用して研究することができたから。
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Research Products
(4 results)
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[Journal Article] The histone methyltransferase WHSC1 is regulated by EZH2 and is important for ovarian clear cell carcinoma cell proliferation.2019
Author(s)
Kojima M, Sone K, Oda K, Hamamoto R, Kaneko S, Oki S, Kukita A, Machino H, Honjoh H, Kawata Y, Kashiyama T, Asada K, Tanikawa M, Mori-Uchino M, Tsuruga T, Nagasaka K, Matsumoto Y, Wada-Hiraike O, Osuga Y, Fujii T.
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Journal Title
BMC Cancer.
Volume: 19(1)
Pages: 455
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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[Journal Article] Anti-tumor activity of dual inhibition of phosphatidylinositol 3-kinase and MDM2 against clear cell ovarian carcinoma.2019
Author(s)
Makii C, Ikeda Y, Oda K, Uehara Y, Nishijima A, Koso T, Kawata Y, Kashiyama T, Miyasaka A, Sone K, Tanikawa M, Tsuruga T, Mori-Uchino M, Nagasaka K, Matsumoto Y, Wada-Hiraike O, Kawana K, Hasegawa K, Fujiwara K, Aburatani H, Osuga Y, Fujii T.
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Journal Title
Gynecol Oncol.
Volume: 155(2)
Pages: 331-339
DOI
Peer Reviewed
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[Journal Article] Interleukin-17 is associated with expression of programmed cell death 1 ligand 1 in ovarian carcinoma.2019
Author(s)
Aotsuka A, Matsumoto Y, Arimoto T, Kawata A, Ogishima J, Taguchi A, Tanikawa M, Sone K, Mori-Uchino M, Tsuruga T, Oda K, Kawana K, Osuga Y, Fujii T.
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Journal Title
Cancer Sci
Volume: 110(10)
Pages: 3068-3078
DOI