2020 Fiscal Year Research-status Report
卵胞の成熟と絨毛細胞分化を制御する新たな共通因子Hippo経路の分子機構の解明
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19K09777
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Research Institution | Fukui Prefectural University |
Principal Investigator |
水谷 哲也 福井県立大学, 看護福祉学部, 教授 (90322734)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 絨毛細胞 / YAP / TAZ / TEAD |
Outline of Annual Research Achievements |
Hippo pathwayは、細胞増殖や器官サイズを制御するシグナル伝達系として明らかになっている。Hippo pathwayによるシグナルは、最終的に転写共役因子YAP/TAZの活性を制御することで様々な遺伝子の発現を調節している。我々は、YAP/TAZが卵巣や胎盤でさまざまな遺伝子の発現量を変化させ機能調節していることを見いだしている。 本年度は、YAP/TAZがどのようなメカニズムで絨毛細胞における遺伝子発現を制御しているか検討した。絨毛細胞由来BeWo細胞を用いて、YAP/TAZノックダウンの影響と共にYAP/TAZと相互作用することが明らかになっている転写因子TEADのノックダウンの影響を検討した。BeWo細胞においてYAP/TAZと同様TEADのノックダウンにより、ステロイドホルモン関連因子の発現が誘導された。また、抗E-カドヘリン抗体を用いた免疫染色によって細胞融合を確認したところ、cAMP刺激と同様YAP/TAZノックダウンやTEADノックダウンによっても細胞誘導が見られた。 次にYAP/TAZによる遺伝子発現変化がTEAD依存的か否かを明らかにするため、TEADノックダウン細胞にYAPの恒常性活性化型である5SA-YAPをアデノウイルスを用いて強制発現した。その結果、コントロール細胞では5SA-YAP を強制発現すると、8Br-cAMP誘導性のCYP19A1, CYP11A1, HSD3B1発現が著しく抑制される一方、TEADノックダウン細胞に5SA-YAPを強制発現したところ、CYP19A1, CYP11A1, HSD3B1の発現抑制は観察されなかった。 これらの結果から、絨毛細胞におけるYAP/TAZによるステロイドホルモン関連因子の遺伝子発現調節は卵巣顆粒膜細胞同様、YAP/TAZ-TEAD複合体を介していることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
申請時に予定していたように、YAP/TAZによる遺伝子発現調節メカニズムの解析を行った。本年度の研究により、絨毛細胞におけるYAP/TAZによるステロイドホルモン関連因子の遺伝子発現調節は卵巣顆粒膜細胞同様、YAP/TAZ-TEAD複合体を介していることが明らかとなった。また、遺伝子発現調節メカニズムだけではなく合胞体栄養膜細胞特異的な現象である細胞融合への影響も明らかとなった。
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Strategy for Future Research Activity |
今回示された新しい遺伝子発現調節メカニズムについて、その詳細を継続して解明に取り組む。 また、絨毛細胞におけるYAP/TAZの作用について、BeWo細胞だけでなく栄養膜幹細胞を用いてより生理的な意義を明らかにしていく予定である。
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Causes of Carryover |
消耗品の購入費が予定より少なくなったため、次年度使用額が生じた。 本年度、これと合わせて消耗品の購入にあてる予定である。
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