2021 Fiscal Year Research-status Report
卵胞の成熟と絨毛細胞分化を制御する新たな共通因子Hippo経路の分子機構の解明
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19K09777
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Research Institution | Fukui Prefectural University |
Principal Investigator |
水谷 哲也 福井県立大学, 看護福祉学部, 教授 (90322734)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 胎盤 / YAP / TAZ / 栄養膜幹細胞 / 合胞体栄養膜細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
Hippo pathwayは、細胞増殖や器官サイズを制御するシグナル伝達系として明らかになっている。Hippo pathwayによるシグナルは、最終的に転写共役因子YAP/TAZの活性を制御することで様々な遺伝子の発現を調節している。我々は、YAP/TAZが卵巣や胎盤でさまざまな遺伝子の発現量を変化させ機能調節していることを見いだしている。 近年、ヒト胎盤と同様、合胞体栄養膜(Syncytiotrophoblast: ST)細胞および絨毛外性栄養膜(Extravillous trophoblast: EVT)細胞への分化能を有した栄養膜幹(TS)細胞が樹立され、ヒト胎盤機能の解析が可能となった。 本年度は、ヒトTS細胞を用いてYAP/TAZが細胞性栄養膜(Cytotrophoblast: CT)細胞の維持やST細胞およびEVT細胞への分化に対する役割を検討した。TS細胞におけるYAP/TAZノックダウンの影響を網羅的に明らかにするため、DNAマイクロアレイによる検討を行った。その結果、YAP/TAZノックダウンによりCT細胞特異的遺伝子の発現が抑制される一方、多くのST細胞特異的遺伝子の発現誘導が認められた。実際にRT-qPCRによりST細胞のマーカー遺伝子の発現を検討すると、TS細胞におけるYAP/TAZノックダウンによりこれらの発現誘導が認められた。 また、絨毛細胞由来BeWo細胞を用いて抗E-カドヘリン抗体および抗絨毛性ゴナドトロピンβサブユニット抗体用いた蛍光免疫染色を行ったところ、YAP/TAZノックダウンによりcAMP刺激同様ST細胞様の細胞へと分化誘導された。 以上の結果から、YAP/TAZはCT細胞の維持に重要であると同時にYAP/TAZ活性の低下がST細胞への分化に重要であることが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「申請時」および昨年度記載した「今後の研究の推進方策」に示したように、ST細胞およびEVT細胞への分化能を有するヒト栄養膜幹細胞を用いて、YAP/TAZによる遺伝子発現調節メカニズムの解析を行った。 その結果、YAP/TAZがCT細胞の維持に重要であると同時にYAP/TAZ活性の低下がST細胞への分化に重要である新たな知見が得られ、おおむね順調に研究が進展した。
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Strategy for Future Research Activity |
今回示された新たな遺伝子発現調節メカニズムについて、その詳細を継続して解明に取り組む。また、絨毛細胞の分化にはYAP/TAZ以外にOVOL1やGCM1をはじめとした因子が関与すると報告されているため、これらの因子と合わせて絨毛細胞分化のメカニズムを解明していく予定である。
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Causes of Carryover |
研究はおおむね計画通りに進展したが、消耗品の購入費が予定より少なくなったため、次年度使用額が生じた。 本年度、これと合わせて消耗品の購入にあて、さらに研究を発展させる予定である。
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