2020 Fiscal Year Research-status Report
卵巣癌の個別化治療を目指した免疫プロファイルに基づく包括的バイオマーカーの開発
Project/Area Number |
19K09786
|
Research Institution | Saitama Medical University |
Principal Investigator |
長谷川 幸清 埼玉医科大学, 医学部, 教授 (30534193)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
垣見 和宏 東京大学, 医学部附属病院, 特任教授 (80273358)
松下 博和 愛知県がんセンター(研究所), 腫瘍免疫制御TR分野, 分野長 (80597782)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | 卵巣癌 / 免疫療法 / バイオマーカー |
Outline of Annual Research Achievements |
近年卵巣癌に対する免疫療法の研究が活発に行われてきている。しかし、進行および再発卵巣癌に対する免疫チェックポイント阻害薬の臨床試験では未だ十分な成果が得られていない。これは、卵巣癌が多彩な組織型を持つだけでなく、多彩な免疫学的背景を持つことがその一因であると考えられる。本研究では、卵巣癌における個別化がん免疫療法の確立を目指すために、次世代シーケンサーを利用した免疫ゲノム解析によって得られる免疫プロファイル、ネオアンチゲン、抗原提示機能などの多面的な免疫学的指標を包括的かつ視覚化できるようなバイオマーカーであるイムノグラムの開発を目指している。がん免疫療法を成功に導くためには、ターゲット腫瘍においてCancer-Immunity Cycleにおけるどのステップが問題になっているかをよく検討することが重要である。そうすることにより、自ずと奏効する可能性が高い患者の選出や、有用な併用薬のパートナーが見つけやすくなる。ただ、このCancer-Immunity Cycleにも見られるように、多くの因子が複雑に絡みあい、腫瘍に対する免疫反応を減弱させているため、効果的な免疫療法を計画するには様々な段階での免疫の増強および免疫抑制因子の排除の両方の検討が必要である。この複雑な宿主および腫瘍の免疫相互作用をCancer-Immunity Cycleになぞらえて、レーダーチャートを利用した上で視覚化するイムノグラムという概念が提唱され、がん免疫治療への応用が期待されている。当該年度はZ-scoreを利用してイムノグラムの各因子のクラスター解析を行い、また特徴的な遺伝子変異及び臨床的ファクターも加えて評価を行い、漿液性癌、明細胞癌のいずれにおいても免疫がアクティブなグループを特定した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究ではまずは難治性の卵巣癌である漿液性がんのエクソーム解析およびRNA-seqデータを利用して、変異遺伝子と免疫応答に関して統合的に免疫ゲノム解析を行い、さらに種々の標準化によって評価し、これらのデータをイムノグラムとしてレーダーチャートに反映、可視化させることを目標にしている。まずは臨床的に比較しやすいイム予後との関連を見ることでイムノグラムを検討している。イムノグラムの各軸のz-scoreをもとにクラスタリングして予後、の比較、またHR status(HR関連gene set)もイムノグラムの軸に加え、あるいはnomogramという方法で予後を予測できないか検討中である。また二群間で発現が異なる遺伝子が特定の遺伝子セットに偏っているかをみるGSEA を発展させたsingle sample GSEAという方法を用いて各々の症例での遺伝子群の発現をスコア化して評価した。漿液性がんに関してはHRD, HRPの2群に分けて解析を行ったところ、いずれもほとんどの免疫因子が活性化せれているimmune-hot、一部の免疫のみが活性化されているimmune-intermediate, 免疫因子の活性を認めないimmune-coldの3群に分かれることがわかった。この3群間で予後差を認めることはなかったが、症例数が限定的な可能性も考えられた。明細胞癌に関してもARID1A変異あり、なしの2群に分けて解析したところ、どちらの群においても漿液性癌同様にimmune-hot, intemediate, coldの3群に分けられたが、immmune-hotの割合が約10%と漿液性がんに比べて半分以下と少ないことがわかった。
|
Strategy for Future Research Activity |
漿液性癌では、BRCA変異やCCNE1の増幅等も関連させてimmune-hotの群の臨床的、分子生物学的特徴に関して解析を行う。明細胞癌に関してはPIK3CA、KRASの変異やTMBに関連させて、漿液性癌同様に臨床アウトカムや分子生物学的特徴とイムノグラムを用いた免疫シグネチャーとの関連について探索的に解析を行う。
|
Causes of Carryover |
COVID19の状況が昨年からも継続し、予定した学会への参加中止や、試薬等の入荷の遅れが多く、一部研究内容は次年度へ繰越が必要であったため。
|