2022 Fiscal Year Annual Research Report
腫瘍随伴マクロファージの免疫学的動態の制御による卵巣癌に対する新規治療戦略の開発
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19K09826
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
本原 剛志 熊本大学, 病院, 講師 (10457591)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田代 浩徳 熊本大学, 大学院生命科学研究部(保), 教授 (70304996)
片渕 秀隆 熊本大学, 大学院生命科学研究部(医), 名誉教授 (90224451)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 卵巣癌 / マクロファージ / 腫瘍微小環境 |
Outline of Annual Research Achievements |
マクロファージコロニー刺激因子1受容体(Macrophage colony-stimulating factor 1 receptor: CSF-1R)は、クラスIII受容体型チロシンキナーゼ(Receptor tyrosine kinase: RTK)に属し、様々な悪性腫瘍でその活性化が認められている。CSF-1Rは主にマクロファージや骨髄細胞系細胞の細胞表面に発現しており、癌細胞などから産生されるそのリガンドであるCSF-1と結合し二量体を形成することで活性化され、種々の細胞内シグナル伝達系を通じて、増殖や分化など様々な細胞機能を制御する。近年では、いくつかのRTK阻害剤の臨床的な成功によって、様々なRTKを標的とする新規分子標的治療薬の開発が積極的に推し進められている。 今回われわれは、卵巣癌の腫瘍組織内における癌細胞とTAMとの細胞間相互作用、そしてそれらTAMの機能を制御するCSF-1RならびにそのリガンドであるCSF-1の分子生物学的な役割を明らかにするために、網羅的な基礎解析を行なった。 その結果、卵巣癌細胞においてCSF-1の発現が認められる一方で、TAMにおいてはCSF-1Rの発現がみられることが、各種のin vitroの解析で明らかにされた。そして、CSF-1R阻害剤を用いた治療実験では、TAMの機能を抑制することで、抗腫瘍効果を発揮することが実験的に証明された。さらに、Kaplan-Meier法にて解析を行った結果からは、CSF-1高発現の症例においては、その予後が不良である傾向が示された。 以上の結果、これらCSF-1/CSF-1Rシグナル経路の抑制が、卵巣癌に対する有望な新規治療戦略となり得る可能性が期待される。
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