Outline of Annual Research Achievements |
婦人科腫瘍には、既存の抗腫瘍剤では奏功性が認められない子宮間葉性腫瘍:子宮筋腫や子宮平滑筋肉腫(LMS)がある。子宮筋腫は、家族性腫瘍であるCowden病に関連し、その発症原因はPTENの病的バリアント(変異)とされている。林らは、分子病理学的解析によりヒト子宮LMSの発症機序を検討している。IFN-γ経路は腫瘍の成長や浸潤の制御に重要で、いくつかのがんに関係するとされている。林らは、ヒトとマウスの子宮組織を用いて、ヒト子宮LMSでのLMP2発現の欠損の原因を追究すると、IFN-γ経路、特にJAK-1体細胞突然変異がLMP2の転写活性化に及ぼす特異的作用へと導くことがわかった。これらの研究成果により、婦人科間葉性腫瘍における「がんゲノム医療」の新たな展開の可能性が示されている。次世代シークエンス(NGS), RNAseq, CGH解析によって、遺伝子病的バリアントとして、AXIN2, MED12, ATRX,EZN2, PTEN, CREBBP, TP53, PIK3CA, KDR, RB1, CARD11, AR, ATM, FAT1, ERBB4, BRAF, CBL, DXR1, RAD21が、検出されている。さらに詳細な解析から、私達研究グールは、創薬を目的とした子宮平滑筋肉腫の病的バリアントの候補因子として、MED12, ATRX, TP53, RB1, CCNE等(※MED12は、子宮筋腫に対しても候補病的バリアントとなる)が、有望であると考えている。子宮平滑筋肉腫に対するリキッドバイオプシーを用いた診断法と創薬の確立を目標に、私達の研究グループは、子宮平滑筋肉腫を中心とした子宮間葉性腫瘍における病的バリアントの同定を行っている。
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