2019 Fiscal Year Research-status Report
analysis of osteoclasts involved in hearing loss and balance disorder
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19K09855
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
神崎 晶 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 講師 (50286556)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 中耳炎 / 破骨細胞 / 耳小骨 / 骨吸収 / 骨破壊 |
Outline of Annual Research Achievements |
破骨細胞による骨吸収と骨芽細胞による骨形成のバランスにより骨のリモデリングが行われて骨形態が維持されており、それは耳小骨も例に漏れない。そのため破骨細胞が炎症等により誘導されるとそのバランスが崩れ中耳炎は非常に一般的な疾患であり、反復すると難聴になることは知られているが、その難聴になるメカニズムは未解明である。このメカニズムが解明されれば難聴の予防、治療が可能となりうるという点で非常に重要である。仮説としてはサイトカインに誘導されて破骨細胞が増加することにより、耳小骨が溶解、固着するため、もしくは感染により酸が発生し直接的に骨が溶解されるためというものがある。そこで、今回我々は破骨細胞の増加によって耳小骨の溶解、固着が起きるという仮説を検証するため、右耳にLPS(エンドトキシン)を、左耳にはコントロールとして生理食塩水を投与した中耳炎モデルマウスを作成し、両耳の耳小骨の破骨細胞をTRAP染色にて染色し比較するという実験を行った。その結果、コントロールに比べ中耳炎を起こした耳の耳小骨では破骨細胞の数が著しく増えていることが観察された。 破骨細胞は常時、ツチ骨の前突起やアブミ骨全体で一定量発現していることが確認出来た。中耳炎になった耳の耳小骨ではツチ骨の骨頭、キヌタ骨の長脚、アブミ骨の骨底以外において破骨細胞の増加が確認され、アブミ骨の骨底では代償的に破骨細胞の発現が低下していることが確認された。また、LPS投与によって薬剤が内耳に入りやすいことも解明できた。また内耳障害によって内耳骨溶解が生じるかを解析した。また、本研究に関連して内耳へのドラッグデリバリーについてアメリカ耳鼻咽喉科学会で発表し、学会賞を受賞した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
予定通りに研究が進んでいる。2019年度において、中耳炎により骨破壊が生じて難聴が発生する機序、内耳炎の機序を新しい方法で解明した。リポポリサッカライド(以下、LPS)を用いて実験を行った。興味深いことに、LPS投与時に非投与時と比較して、アブミ骨底板は破骨細胞の減少が予想に反して生じていた。このことは、内耳という感覚器に侵入しないように防御を行っているという意味で合目的な反応である。一方、中耳炎で生じる細菌性LPSが内耳の正円窓のバリアを開くため、内耳炎になりやすい機序を解明しえた。破骨細胞数のことおと、2本の論文を予定している。また、positive dataではないが、音響外傷によって生じる内耳障害をきたした場合に内耳の骨溶解を生じてないことも解明できた。
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Strategy for Future Research Activity |
TRAP染色以外にTRAPによって蛍光発色するマウスを使用して比較している研究を行っている。人工内耳前庭障害によるマウスの骨の影響について検討する。今後この破骨細胞誘導のメカニズムが解明されていけば、より様々な経路をもって中耳炎によって増加する破骨細胞を抑制し、難聴の予防を行えるようになると期待する。 リポポリサッカライド(以下、LPS)は中耳から内耳への感染伝搬に関与する事が判明している。これは、正円窓膜の透過性亢進が原因と考えられる。そこで、我々はLPSと薬剤(ルシフェリン)を右耳の鼓室内に、生理食塩水と薬剤を左耳の鼓室内に投与したのち、IVISイメージングシステムを用いて薬剤の到達を蛍光化した。そして、その蛍光を光子量として示すこと薬剤の内耳到達量の経時的変化を調べた。その後、左右の耳の正円窓膜を電子顕微鏡で観察することで、LPSが正円窓の膜透過性を亢進させ、薬剤の到達を促進させるのかを検討した。結果、光子量の総量とピーク値はLPS同時投与群において有意に多く、半減期に有意差はなかった。電子顕微鏡写真は、LPSにより正円窓膜の中層が拡張し中耳側に細胞が出現していた。従って、LPSは正円窓膜において炎症を惹起させ、薬剤の内耳到達促進につながる透過性の亢進をもたらすと考えられた。
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Research Products
(4 results)