2021 Fiscal Year Research-status Report
S100A10による頭頚部癌悪性化と新規治療・診断への応用
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19K09861
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Research Institution | Miyagi Prefectural Hospital Organization Miyagi Cancer Center |
Principal Investigator |
小鎌 直子 地方独立行政法人宮城県立病院機構宮城県立がんセンター(研究所), がん先進治療開発研究部, 主任研究員 (30390892)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | がん |
Outline of Annual Research Achievements |
頭頚部癌は特徴的なドライバー遺伝子がない。このため、上皮間葉転換(EMT)などが解析されてきたが、予想された進展は乏しく、新たな突破口が期待されている。癌幹細胞(CSC)は、頭頚部癌の治療標的として注目されている。申請者はCSCのプロテオミクス解析を行い、S100A10が特異的に発現していることを突き止めた。予備的解析から、S100A10が頭頚部癌CSCの悪性形質に貢献している可能性が浮上した。本研究の目的は、S100A10による頭頸部癌の悪性化を解明し、治療・診断標的としての妥当性を検証することである。特に、S100A10 による①CSCの維持、②浸潤と転移、③予後との相関、④診断マーカーおよび治療標的としての可能性、からなる4つのサブテーマを展開する。頭頚部癌におけるS100A10機能の分子基盤を同定することで、CSCの謎を解き明かし、診断へのブレークスルーを狙う。最終的な目標は、これらの学術的成果を応用してS100A10を標的とする新たな治療に向けた基盤技術を開発することとする。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ヒト頭頚部癌PDX細胞株(HPCM2)について、S100A10のノックダウン細胞およびノックアウト細胞を樹立したところ、親細胞やコントロール細胞と比較して、in vitroにおける細胞増殖とヌードマウスを使ったin vivoにおける異種移植腫瘍増殖が抑制されていた。特にS100A10ノックアウト細胞は、増殖の低下が著しかった。 また、S100A10ノックアウト細胞のがん幹細胞性について、親細胞との比較を行った。その結果、S100A10ノックアウト細胞は、スフィア形成能や、がん幹細胞マーカーレベル、数種の薬剤耐性遺伝子の発現が低下していた。しかし、がん幹細胞マーカー遺伝子や、別種の薬剤耐性遺伝子の発現については、親細胞との差はみられなかった。一方、in vivoにおける超免疫不全マウス(NOG)を使った造腫瘍能の比較では、マウスに移植されたS100A10ノックアウト細胞は、腫瘍を全く形成できないことが明らかとなった。 その後、in vitroの実験で、対照細胞に比べ、S100A10ノックダウン細胞およびS100A10ノックアウト細胞の創傷治癒能、細胞遊走能、細胞浸潤能が有意に低下していることが判明した。 これら、細胞遊走能・浸潤能低下のメカニズムを探るために、共焦点顕微鏡下でのタイムラプス観察を行った。すると、対照細胞が非常に活発に移動しているのに対し、ノックアウト細胞はほとんど静止しており、両細胞の移動距離に有意な差が出たことから、S100A10は、細胞運動に欠かせない分子であると結論付けた。 ここまでの解析により、S100A10が頭頸部癌の悪性化と深く関わっていることが、さらに明らかとなり、今後は悪性化に関与するS100A10のメカニズムの更なる解明や、臨床検体を用いたS100A10の発現と予後の解析など、以降に計画している研究が順調に進められると考えられるから。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、以下のような研究を推進していく。 ①今回、対照細胞に比べ、S100A10ノックダウン細胞およびS100A10ノックアウト細胞の創傷治癒能、細胞遊走能、細胞浸潤能が有意に低下する原因を探索し、S100A10のがん悪性化に関わるメカニズムを解明しようと試みる過程において、S100A10は、細胞運動に欠かせない分子であることが分かってきた。従って、今後もS100A10の分子基盤をさらに追及することによって、治療標的としての方向性を見極め、かつ、妥当性を探る。 ②臨床検体を用いたS100A10発現と予後の解析を行い、S100A10発現レベルと予後の関係性を検証する。予備的な免疫組織染色では、S100A10は多症例でがん組織 に強く発現していた。浸潤や転移症例では、特に浸潤最前部(invasive front)においてのS100A10の発現が高いことから、悪性度と関係がある可能性が大きい。 そこで、頭頚部がん手術検体において免疫組織染色と遺伝子発現レベルの両面から調査を行い、S100A10と悪性度や予後など病態との相関関係を明らかにする。
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Causes of Carryover |
コロナ禍により、実験に使用する消耗品等の納品が滞り、実験が思うように進まなかったため。
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Research Products
(1 results)