2019 Fiscal Year Research-status Report
間葉上皮転換(MET)と癌幹細胞特性喪失を同時誘導する頭頸部癌転移制御の研究
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19K09876
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
今西 順久 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 講師(非常勤) (80255538)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 咽頭癌 / 間葉上皮転換(MET) / がん幹細胞特性 / Cox-2 / E-cadherin / 導入化学療法 / 化学放射線治療 / 独立予後因子 |
Outline of Annual Research Achievements |
1) E-cadherin低発現咽頭扁平上皮癌細胞に対するCox2およびEP2(PGE2受容体)の選択的阻害(celecoxibおよびPF-04418948使用)により,E-cadherin発現増強およびvimentin発現減弱を伴うMET誘導(EMT抑制)を介した,細胞増殖能・遊走能の抑制を含む抗腫瘍効果が認められた。下咽頭癌切除標本の組織学的検討および統計解析より,E-cadherin発現低下とCox2発現亢進に特徴付けられるEMTが頸部リンパ節転移に深く寄与していると考えられた。 2) 咽頭扁平上皮癌細胞株に対する選択的なCox2阻害およびEP2阻害は,幹細胞関連因子であるOct3/4 および Nanogの発現抑制,およびanchorage-independentな細胞増殖能を反映するsphere formationを抑制し,がん幹細胞特性の減弱効果を示した。中下咽頭癌の生検および導入化学療法後の切除標本を用いた免疫組織化学的検討の結果,治療前の癌組織におけるCox2発現と導入化療による組織学的治療効果に有意な逆相関を認めた。 3) 一次治療として化学放射線治療を施行した下咽頭癌・声門上癌患者96名を対象に,患者・疾患因子に加え,種々の血液学的な栄養・免疫・炎症の指標としてCRP,Alb,CRP/Alb比,TP,mGPS,PNI,T-chol,CONUT,mCONUT,BMI,血球数(白血球数,好中球数,リンパ球数,単球数,血小板数,Hb),NLR,PLR,LMR,およびAGR(Albumin-Globulin Ratio)の予後予測能を多変量解析にて検討した結果,OSではN分類(p=0.021),AGR(p=0.008),PLR(p=0.002),DFSではN分類(p=0.005),mGPS(p=0.011),PLR(p=0.002)が有意な独立予後因子であった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
連携研究者の人事異動に伴い,実験研究環境の再整備と順応に相応の時間を費やしたのと同時に計画通りの実験遂行に新たな制約が生じたこと,細胞実験の一部で至適条件の設定に試行錯誤を重ねていること,および臨床組織標本の検討において病理組織学的評価項目の追加が必要となったことにより所見の再評価に多大な時間を費やしたこと,などが要因で,当初の計画に遅延が生じている。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き実験研究の環境再整備およびスケジュールの再調整を効率的に進めてゆく。ある程度の遅延は不可避の状況にあるが,その都度状況に合わせて,臨機応変に研究計画内容を適宜修正しながら進めてゆく。 諸般の技術的制約を鑑みて,必ずしもin vivo modelの確立に拘らない方針とし,in vitroレベルでの細胞の機能的変化(表現型の変化)の評価を優先しながら検討を進めてゆく。 臨床組織標本を用いる検討においては,評価項目(独立変数)についてあらかじめ十分網羅しておく一方で,最終的には臨床的に必要不可欠なもの以外は適宜除外して,合理的なモデルと手法により統計学的解析を進める。
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Causes of Carryover |
理由:参加学会への出張経費に関して他の研究資金を充当することができたこと,年度終盤からCOVID-19感染拡大により参加予定学会が中止されたこと,実験に必要な消耗品類について当初予定よりも経済的な調達ができたこと,および連携研究者の人事異動に伴い実験研究の進捗に遅延が生じていること,などによる。 使用計画:次年度の研究費と合わせて,必要な消耗品購入・謝金・学会参加出張費・研究成果発表費(論文出版費)などに充当する。
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