2019 Fiscal Year Research-status Report
新規ワクチン開発と誤嚥性肺炎予防に繋げる肺炎球菌ノイラミニダーゼAの役割解明
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19K09878
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Research Institution | Wakayama Medical University |
Principal Investigator |
平石 富美恵 (金子富美恵) 和歌山県立医科大学, 医学部, 客員研究員 (40328414)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
河野 正充 和歌山県立医科大学, 医学部, 助教 (20511570)
須納瀬 弘 東京女子医科大学, 医学部, 教授 (50261631)
保富 宗城 和歌山県立医科大学, 医学部, 教授 (90336892)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 肺炎球菌 / ノイラミニダーゼA / 鼻腔保菌 / 肺炎球菌菌血症 / 誤嚥性肺炎 / 肺炎球菌ワクチン |
Outline of Annual Research Achievements |
嚥下機能低下に伴う誤嚥性肺炎に対する予防と再発・重症化回避のためには、重要な起因菌である肺炎球菌につき現在実用化されている莢膜多糖体ワクチン(PPV)・蛋白結合型ワクチン(PCV)の弱点を補う次世代の肺炎球菌ワクチンの開発が急がれている。我々は肺炎球菌に共通する酵素蛋白でシアル酸の切断にて粘膜への菌定着をノイラミニダーゼA(neuraminidase A: NanA)に着目、高齢者かつ慢性閉塞性肺疾患(COPD)を有する患者の誤嚥性肺炎の発症・重症化への関与とNanA阻害型ワクチンの予防効果を明らかにすることを目指す。 平成31年度(令和元年度)の成果を報告する。肺炎球菌感染実験には全ゲノムが解析されている血清型4型野生株(TIGR4/WT)と同株より作成したNanA欠損株(TIGR4ΔNanA)を用いた。まず鼻腔での保菌と感染動態を確認するため若年マウス(6週齢, 雌)に対し覚醒下にて経鼻接種、感染後1, 3, 5日後における血液、鼻腔洗浄液、鼻腔・嗅球・大脳組織(破砕・懸濁液)における肺炎球菌数を確認した。野生型マウス(C57BL/6J)では有意差が得られずB細胞機能低下マウス(CBA/Nslc)を用いたところ鼻汁・鼻腔組織破砕懸濁液における肺炎球菌検出がTIGR4ΔNanAで有意に減少し鼻腔への定着防御にNanAの欠損が関与すると考えられた。次いで誤嚥性肺炎モデルとして若年マウス(CBA/Nslc , 6週齢, 雌)に深麻酔ののち経鼻的に肺炎球菌 (TIGR4/WT, TIGR4ΔNanA)を過量接種、感染後1, 3, 5, 14日後における血液、肺胞洗浄液、肺組織(破砕・懸濁液)における肺炎球菌数を確認した。結果ほぼ全マウスが肺炎球菌菌血症に陥り、かつ肺胞洗浄液において肺炎球菌が検出されたマウスはTIGR4/WT、TIGR4ΔNanAのいずれにおいてもわずかであった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
肺炎球菌誤嚥性肺炎モデルでの感染実験にあたり、当初使用を予定していた肺炎球菌血清型6A型とそのNanA欠損株が不安定であったため、血清型TIGR4型とそのNanA欠損株での実験に切り替え、実験を遂行した。結果、NanA欠損株では鼻腔感染が抑制された。平成31年度には遺伝子組み換えNanA(recombinant NanA: rNanA)を用いた経鼻免疫実験については、rNanA作成に用いる機器の準備段階にあり、やや遅れているが順調に遂行予定である。 現在、6A型NanA欠損株の再作成は終了している。
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Strategy for Future Research Activity |
現在は、肺炎球菌血清型6A型のNanA欠損株の再作成が終了し、純度も得られている。先行して行った血清型TIGR4型による感染実験により、鼻腔での肺炎球菌定着予防にはNanAの欠損が有効であったものの、誤嚥性肺炎モデルでは多くのマウスで肺胞表面に肺炎球菌が留まらずに血中に移行、菌血症となったことから、肺組織におけるNanAの役割評価には、6A型および他の血清型での再実験と、令和2年度に行うrNanAを用いた経鼻免疫実験を経て結論づけたいと考える。
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Causes of Carryover |
平成31年度に予定していた実験課題の一部に令和2年度に持ち越しを生じたため、実験器具・薬品など消耗品の物品費の補助として使用を検討している。
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